JAはだの果樹部会茶業部(高梨福太郎部長)支援のもと、市内お茶農家の若手3人がお茶と共に生産している和紅茶の品質向上に乗り出した。新たな装置を独自に作り、菩提にある高梨茶園で試作を行った。
新たな取り組みに着手したのは同部後継者グループに所属する高梨晃さん(高梨茶園)、柏木元樹さん(柏木茶園)、増田博也さん(増田茶園)の若手生産者3人。茶業部が毎年計上している若手支援予算の増額を受け、紅茶の「萎凋(いちょう)」という工程に使う「萎凋槽」を製作した。
茶葉を陰干し、水分を蒸発させる作業である萎凋は、現在は萎凋槽に大量の風を送り乾燥させる手法が主流となる。高梨茶園では緑茶の品質保持用の生葉コンテナで代用していたが、これではファンが小さく風量が弱いため、均一に乾燥しないという課題があった。
一方で、茶業部では若手育成費として研修費等を毎年確保していたが、長引くコロナ禍で実施できず予算が繰り越されていた。これを活用するため「何かやってみたいことはないか」と投げかけたところ、「需要があるが現状では量産が難しい和紅茶のための設備を作りたい」という要望が上がり、初めて現場での取り組み実施となった。
試作で品質向上
高梨さんによると、国内で質の高い和紅茶を生産している農家は、独自に作った萎凋槽を使っていることが多いという。今回の製作にあたり同グループは、萎凋槽を使う静岡県や茨城県の生産農家を視察し事前に作り方を学んでいる。
これを元に長さ5mほどの萎凋槽を設計し、ホームセンターやインターネットで材料を調達。製作は大工仕事が得意だという茶業部メンバーが担当した。風の通り道になる茶葉の下の空間には斜めのついたてを設置し風が均一にいきわたるよう調整したほか、分解して移設できるようにするなど工夫した。
1度に萎凋できる量は70kgほど。生葉コンテナでは緑の茶葉がまだらに残っていたが、試作では均一に乾燥できるという結果が得られた。香味が増し品質が向上したほか、萎凋に要する時間も2〜3時間短縮された。
茶業部では2カ年計画で予算付けしており、後継者グループでは結果を共有し来年以降の一般販売に向け研究を続ける。また、高梨茶園では今回の試作をジャパン・ティーフェスティバルに出品し、その講評を今後に生かす考えだ。
秦野ブランド創出に期待
日本で生産された紅茶を総じて和紅茶と呼んでいる。緑茶と紅茶は製造過程が異なるだけで、緑茶用茶葉でも作ることができる。進むお茶離れで飽和する2番茶を活用することが多く、中には商品価値向上のため紅茶専用の茶葉を栽培する農家もある。
秦野市内でも4軒が和紅茶を生産し、うち2軒が自ら販売も行う。それ以外は山北町の神奈川県農協茶業センターに原材料として納入。自販している和紅茶は秦野産を打ち出せるが、センターに納入したものは「箱根山麓紅茶」として加工されている状況にある。
「今は個々の農家が独自の取り組みとして生産している状況なので、量産体制を整え『秦野ブランド』としての和紅茶を創出をしたい。今回の取り組みは、その可能性を広げられるものになるのでは」と高梨部長は期待を寄せている。
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