くるくるとハンドルを回すと専用の楽譜を読み込み、誰でも演奏を楽しむことができる「手回しオルガン」。これを一から自作し、イベントや公共施設等で演奏を行う星道也さん(33・秦野市西田原在住)を取材した。
星さんは山形県出身。機械いじりやものづくりが好きで、山形大学工学部を卒業し機械設計の仕事に就いた。転職を機に2018年に秦野に移住し、プライベートに余裕ができたため以前から作りたかった手回しオルガン作りを始めたという。
手回しオルガンとの出会いは小学生の時。家族旅行で行った宮城県の松島オルゴール博物館(現ザ・ミュージアムMATSUSHIMA)で人の何倍も大きい装置が自動演奏する様を見て、「これは何だろう」「なぜ音が出るのだろう」とワクワクし、興味を持った。
知識組み合わせ設計
星さんによると手回しオルガンはベルギーやオランダなどヨーロッパが盛んで、実物を見に現地のオルゴール博物館に足を運んでいる。現在の手回しオルガンは2代目で、現地で教わった知識と機械工学の知識を使い自身で組み上げた。
「DE BERKEN(バーケン)SPECHT(シュペクト)」(白樺のキツツキ)と名付けた手回しオルガンは主に白樺の合板と羊の皮で作っている。日本であまり馴染みがない白樺の板は輸入している仏壇店に加工や焼き印を依頼し仕入れ。特別な材料だけでなく、内部にはラップの芯やエアコンの排水管など日常的な部品も使っている。
また、音を奏でる笛の部分は自ら木を削り加工。楽譜を送るローラーは小型旋盤機で自分で削り出し、ハンドルはアメリカの古い農機具の物を使用した。また、左右にある打楽器のワンポイントであり、本体の名称を表す白樺で作ったキツツキも自作している。
手回しオルガンは小さいものは18〜27鍵盤が多いそうだが、星さんのはその1・5倍の43鍵盤。バイオリン・ブルドンセレッセ・ビブラフォンの3色の音色に切り替えられ、19本×3種のメロディーと10の和音、9つのバスを持つ。打楽器も備え、ザ・ミュージアムMATSUSHIMAの大型の手回しオルガンと同じ規格の楽譜が演奏可能という。楽譜は主に、海外に制作を依頼しており、手回しオルガンを見に行った際に知り合った楽譜作成の機械を持つ人に自ら作った楽譜データを送り取り寄せている。
子どもの笑顔が活力
そんな星さんが、一度だけ手作業で楽譜を作ったことがある。昨年夏、TBS番組「ラヴィット!」出演の際依頼された番組テーマ曲演奏で海外から取り寄せる時間が足りず、古い楽譜を利用して1800個の穴を手作業であけた。この経験から緊急事への対応や、手持ちの楽譜の調整にも使えるよう、既製の手動プレス機を改造し楽譜制作の機械も自作してしまったというエピソードは、さすがの一言。
「手回しオルガンの演奏はあくまで趣味の延長であり、ライフワーク」と話す星さん。藤沢市でのストリート演奏や、イベントやコンサートへの出演依頼、公共施設や商業施設での演奏依頼など休日を使い行っている。
演奏では特に子どもの反応が良いようで、星さんは「目をキラキラさせて聞いてくれると、こちらも嬉しくなります」とやりがいを語る。「今後も自分にできる範囲で、楽しみながらやっていきたい」と続けた。
|
|
|
<PR>
秦野版のローカルニュース最新6件
|
|
|
|
|
|
|
<PR>