前田夕暮生誕140周年記念・第36回夕暮祭短歌大会の表彰式が7月29日、クアーズテック秦野カルチャーホール展示室で開催された。
同大会は郷土の歌人・前田夕暮の功績をたたえ、その文学遺産を継承するとともに「短歌のふるさとづくり」事業を推進することを目的とし、1987年度から毎年開催されている。今年は国内外から1753作品が届き、去年の倍以上の応募数となった。表彰式後は同大会の選者である山田吉郎氏と寺尾登志子氏、夕暮記念こども短歌大会選者の古谷円氏の記念トークショー「前田夕暮を語る」も開催。それぞれが選んだ夕暮の短歌について語り合った。
「少しでも先生の空気感に」
最高賞となる秦野市長賞を受賞した「この日だけ言う事聞かぬ牛の足出荷見送る畜産生徒」を詠んだのは、相模原市在住の加藤典彦さん。短歌の師匠でもある友人から紹介され、「前田先生の作品の空気感に少しでも触れられたら」という思いから応募に至った。山田氏は「出荷の日という切ない場面を畜産生徒が見守っている、なんともいえない気持ちが伝わる。人の世の普遍的なあり方につながっている作品」と評価した。加藤さんは受賞について「とても嬉しいです。この賞に恥じぬよう日々精進していきたい」と喜びを語る。
特別賞に「恐れ入りました」
今年は記念事業として、前田夕暮生誕140周年記念特別賞が設けられた。受賞したのは「数式の下で息する落書きは笑わぬ獣名前はまだない」を詠んだ座間市在住の高校生・磯田有季さん。小学生の頃から短歌が好きで、書き溜めている短歌は約200首あるという。応募した作品について「学生の自分にしか出せない短歌にしました」と話す。寺尾氏は「何の説明もしていないのに、読者にぱっと描写を浮かび上がらせる力がある。恐れ入りました」と評価。磯田さんは「自信はありましたが、受賞できてすごく嬉しかったです」と笑顔を見せた。
その他の入選者と入賞作品は以下の通り(敬称略・佳作は氏名のみ)。▽秦野市教育委員会教育長賞「軒下で皺を重ねた大根が教えてくれる太陽の味」=杉本学・秦野市、▽秦野短歌会会長賞「ショートヘアも似合うのわたし旧友は重き病を押して微笑む」=芦川美栄子・東京都、▽山田吉郎選者賞=「振り下ろすラケットしなる車椅子ターンに踊るポニーテールが」=前田信夫・兵庫県、▽寺尾登志子選者賞「二百五十段怖気づく君おいてって二段先登る五風十雨」=三留心音・秦野市、▽佳作=五十嵐裕治(茨城県)、乾将之介(兵庫県)、江口晴香(川崎市)、大島初江(秦野市)、小田憩(岐阜県)、川平陽子(宮崎県)、黒瀬真弓(横浜市)、小嶋樹(秦野市)、小林あゆ(埼玉県)、椎野小夏(秦野市)、篠崎俊二(厚木市)、関口捺月(秦野市)、土屋恵理(三重県)、戸口あや子(秦野市)、徳永逸夫(高知県)、中本久美子(鳥取県)、畠山昭二(宮城県)、藤井琴子(山口県)、來村尚紀(千葉県)、渡邉照夫(埼玉県)
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