渋沢駅内にある秦野市役所渋沢駅連絡所の一角に、22年間、絶えず花が飾られ室内に彩りを添えている。生けているのは秦野華道協会(小泉道夫会長)に所属する岡部綾翠(りょうすい)さん(芳月流・73)、佐久山晴香(せいこう)さん(草月流・66)、奥谷美初(みはつ)さん(窓月古流・81)、平井光華(こうか)さん(小原流・61)の4人。
4人は皆60年前後華道を続けているベテラン。交替で週に1回火曜日に生けており、季節ごとの植物を用いて1つの作品を仕上げている。生花は週に2、3回新しいものに替えなくてはならず、また少しずつ形も崩れてしまうので手直しが必要。水も欠くことができない大切な世話の1つ。夏場は花器の中に氷を入れるなどの工夫も凝らす。労を惜しまず、繰り返し繰り返し、気が付けば22年間が経った。「当番の時は、ほぼ毎日見に来ています」と話す4人の顔は楽しそうだ。
続けてこられたのは、第一に「花が好きだから」と4人は口を揃える。岡部さんは「自分も楽しいし、見た人も喜んでくれるので嬉しい」とにっこり。皆は流派が異なるため、それぞれ作品の雰囲気は変わる。「生ける人による違いも楽しさのひとつ」と、華道の魅力を話した。
連絡所に訪れた人からも「花があるといい」「明るくなる」など好評だという。わざわざ花を見るために来る人も少なくない。中には、毎週作品の写真を撮りに足を運んでいるファンもいる。同駅の近くに住んでいるこの男性は、約5年前から全ての作品を写真に収めている。「いつも素晴らしい花が飾ってあるので」と微笑む男性。1年間分がまとまると、毎年1人ひとりに本人の作品集としてプレゼントしているという。
同連絡所に花を生け始めたのは1993年。この年、渋沢駅は橋上駅舎となり南北自由通路が開通した。リニューアルをきっかけに「多くの方にお花を楽しんでもらいたい」という気持ちで始めたという。生ける花は開始当初から変わらず、市内の生花店(有)フローリストせきどが協力してきた。同社の飯野婦美子さん(67)は、「市民の皆さんを楽しませてくれているので協力したいと思った」と話す。同連絡所の職員も「室内が潤い、ほっとした気持ちになる」と喜んでいた。
「健康である限り、続けていきたい」と4人。連絡所に訪れる人のため、楽しみにしている人のため、これからも花を飾り続けると誓った。
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