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秦野版 公開:2019年5月1日 エリアトップへ

森の守り人×建築士インタビュー 自然、地元と寄り添うこれからの住まいづくり

経済

公開:2019年5月1日

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―山本さんは2017年に娘さんご家族が住む秦野市へ奥様と移住され、金物を使わない「木の家」を建てられました。その良さとは何でしょうか?

山本厚生さん(以下山本)

/うちは床から建具から全部スギ。ヒノキより安価で柔らかいです。合板とメーカー製品は一切使わず全て無垢で作ってもらいました。私は東京土建の建築カレッジで20年間教えていたのですが、その頃からずっと木の住まいの良さについて話してきました。木材は他のあらゆる自然素材に比べて「強い」。しかも「柔らかい」から加工しやすい。もう一つ、あらゆる生き物に「優しい」。森があるから色んな生き物が生きておれる。柱になっても呼吸して湿度も調整してくれる。本当はそうした木材の長所について地域の子どもたちに話もできたらいいですよね。

今井栄さん(以下今井)/秦野では僕よりももっと昔の年代から学校林というものがあって、木造校舎が古くなったらその木を切って建て直していた。僕の母校の北小学校にもある。今でも学校林の木材を東京オリンピックの選手村に出そうと、市と組合で進行中なんですよ。渋沢駅や鶴巻温泉駅の構内にも秦野産のヒノキが使われていて、市民が木材に触れる機会が多い。うちの組合では県や市の制度も利用し地元産材をPRしています。

―秦野産材の魅力を教えてください。

今井/秦野産材はどこに出しても恥ずかしくない質がある。奈良の東大寺や歌舞伎座にも使われています。風雪にさらされて成長した木は目が細かい。丹沢おろしなど気候風土がいいんでしょうね。秦野市では秦野産材を使うと構造材で60万円、内装材で35万円を限度に補助金が出ます。このような取り組みは県下で唯一。川上(木材生産)から川中(製材)、川下(工務店)まで一連の流れが整備されれば木材利用が活発になってくると言われています。今年4月から「森林環境譲与税」が、令和6年には「森林環境税」が施行されます。令和時代には新制度により木材の利用はより活性化される事が期待されます。

―これからの家づくりに必要なことは何ですか?

山本/昔は地元の大工さんが地元の木を使って建てた家しかなかったのですが、大手住宅メーカーの台頭などにより、家を「作る」というより「買う」流れに世の中が変わりました。しかし今、全国で地産地消の動きがあります。地域の良さが見直されて、収益も地域に還元されるからです。これからは”自分らしく生きるための住まいづくり”をしてほしい。住み手と作り手がコミュニケーションを図りながら一棟を作り上げることで若い大工さんの技能も育ちます。

今井/もともと我々の生活は第一次産業を置いては絶対成り立たない。僕は生まれてからずっと秦野市羽根で生活していますが、学生時代に都会で華やかな世界を見た後も、自分のうちに帰って緑の空気を吸うと生きている感じがした。これからはそういう秦野の良さも見直されていくといいな。

―秦野だからこそできる、環境や健康に優しい家、暮らしの在り方があるということですね。

山本/秦野は県内唯一の里山盆地です。里山は「懐かしい」と言われるが、地球環境問題に直面している今、むしろ「人と生き物が共存する未来像」であるとも考えられます。引っ越して来て気付いたのですが、私が暮らす地域に代々居るお宅では、新築の家でも南側に入口と縁側のある民家型で、垣根があっても門扉はない。おおらかで、ご近所との繋がりが深いこの土地ならではの暮らしぶりに合っていて、大切に受け継ぎたいと思いました。

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