6月に行われる解体を前に内部の整理を進めてきた天台宗医王山東光寺薬師堂(樋口亮順住職・秦野市南矢名)の内部から、仏像などが作られた年代が推測できる貴重な資料が次々と発見された。
奈良時代に開山されたと言われる同寺。その薬師堂は1603年(慶長8年)に建立されたとされている。1892年(明治25年)には大改修が行われたものの老朽化が著しく、耐震性の問題が指摘されてきた。同寺ではこれを機に薬師堂新築を決断した。
既に秦野市の重要文化財に指定されている「木造薬師如来立像」や「木造聖観音菩薩立像」などは本堂に移設されていたが、解体を目前に薬師堂の整理を進めていたところ、仏像が作られた年代を示すと思われる記述など、貴重な資料が発見された。
木板に記された「正徳五年」
仏像などを安置する厨子(ずし)を支える部材には「享和元年」と記されていて、1801年にこの厨子の修理が行われったことが分かった。また、薬師堂に収められてきた日光菩薩立像と月光菩薩立像に関して、製作された年代や目的などを示す木板が発見された。
この資料によればこの両菩薩立像は「正徳五年」(1715年)と記されていて、寄進者の名前を読むことができる。木板を見た秦野市生涯学習課職員で桜土手古墳展示館館長の大倉潤さんは「誰かの供養のために寄進されたものではないか」と推測する。さらに「今まで日光月光菩薩立像の製作年代は正確に分からなかったが、今回の発見によって、はっきりさせることができた。歴史上非常に重要な発見になったのではないか」と加えた。
あらためて感じる同寺の歴史
その他にも金属製板で覆われていた茅葺屋根からは修理を施した年代と思われる「宝暦5年」(1775年)と書かれた板なども見つかった。
同寺法嗣の樋口亮翔さんは「今回熟慮を重ねて改修でなく新築を決断した。今回の工事を機に、いろいろなものが見つかり、改めて寺の歴史を感じることができた」と話した。
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