新型コロナに伴う臨時休校で、各地で整備が加速しているICT教育。秦野市でも小・中学校の全児童・生徒へのタブレット導入を早めるなど、計画が前倒しされた。そんな中、実証実験校としてICT教育に積極的に取り組んでいる渋沢小学校(小出昭一校長)を取材した。
これは市教育委員会が推進する「ICTを活用した新たな学びプロジェクト」としての取り組み。段階的に行ってきたICT活用を発展させるためのもので、東中でも実践している。
ICT部会立ち上げ
きっかけは、情報管理担当の川原翼教諭(5年1組担任)の提案。臨時休校でオンライン教育とICTを運用する体制の必要性を感じ、4月中旬の会議で提言した。
これを受け、同下旬に学校としてICT部会を設立。各校40台ほど配備されていたタブレット端末を積極的に活用していた土台もあり、早々に運用を開始した。
主な取り組みは、これまで利用してきた「eライブラリ(学習ドリルソフト)」と新たなツール「Googleサイト」の活用。「eライブラリ」は、メッセージ機能を軸にコミュニケーションツールとして活用し、主に児童の心情面をサポートした。配信は好評で、これを見た流れでタブレットを学習に利用する割合が増えたという。
その後、新たな展開を模索する中、同部会では簡易的にページが作れる「Googleサイト」に着目した。内容は児童の学習モチベーション維持に繋げるもので、PTAから「休校明けも残してほしい」と打診され、他校からも問い合わせを受けるなどこちらも反響を得た。
「休校から1カ月は子どもたちに何もしてあげられず悔しい思いでしたが、運用後は今できる最善が尽くせたのでやって良かった」と川原教諭。
特別支援級でも
また、同校特別支援級(すみれ)でも、タブレットに入っている授業支援クラウド「ロイロノート」を活用したサポートを展開した。
支援級ではコロナ前からタブレットを積極的に活用し、一人ひとりに合わせた学習支援等を行っていた。これを拡充し、校内用とは別に家庭用に個々のアカウントを設定。学習面だけでなく、心理面のケアに重点を置いている。
教師からの配信は動画で行い、児童からも動画で返信できるように。クラスメートにも共有することで、顔の見える関係を構築していった。
学校からの190本の動画に対し、児童側も130本の動画を返すなど、楽しんで活用していた様子が伺える。特別支援級の岩澤勇二教諭は、「保護者への安心感にも繋がったようで、アンケートや面談で大きな反響をもらいました」と話している。
神奈川県内第1号ロイロ認定ティーチャー
3年1組担任の荒谷 舞(あらや まい)教諭は、全国的に大きなシェアを持つ「ロイロノート」の積極活用事例として、県内公立校第1号となる「ロイロ認定ティーチャー」に昨年末認定された。民間からの転職経験を持つ同教諭は「根拠を持って表現できる力を育てたい」という考えのもと、ロイロで養えるプレゼン能力に着目し活用してきた。
ロイロノートでは、紙ベースの学習ではできない動画や写真を使った発表等が可能で、パワーポイント等より簡単な操作で資料作成ができる。「自分で考え、資料を作り、大勢の前で発表するというのは社会でも役立つ能力」と、学びを深める効果に期待を寄せる。
これ以外にも良いと思ったものは積極的に取り入れ、別のツールでマーケティングを学び公民館イベントにクラスで出店。その売り上げの使い方を自分たちで決めるという実践的な学習も行っている。「こういったツールは今後社会で必須なので、マナーを含め学ぶ場は必要。自分の取り組みが全体にフィードバックされていけば」と荒谷教諭は話した。
実証実験校としての取り組みの結果、家庭の通信環境整備など多くの課題も出たが、一方で再開後の学習に役立つ、今後想定される第2波・第3波への備えになるなどの成果もあげている。
小出校長は「休校期間だけの取り組みに終わらず、さらに発展させて常時活用できるよう探り続けていきたい」と今後の展望を語った。
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