五洋工業株式会社(秦野市菩提170の5/酒村(さけむら)幸男社長)が中心となり、町工場の技術を集め開発した卵焼き専用フライパン「魔法の鉄板フライパン」が、東京インターナショナル・ギフト・ショー春2021のキッチン&ダイニンググッズコンテストで大賞に選ばれた。独自の生活雑貨ブランド「Plodigt(プロディグト)」として開発された同商品は、バイヤーから「いつ発売するのか」「いくらなのか」など多くの反響が寄せられた。
1974年に秦野で創業し、ステンレスなど精密板金加工を行う五洋工業。食品検査装置の部品加工を軸に、既存の量産部品や顧客の図面から作るオーダー部品の製造を行っている。5年前に創業者の先代から会社を引き継いだ酒村社長は、販路拡大のため積極的に商談会や展示会など様々な場に顔を出しながら、自社製品を作るための横の繋がりも模索していた。
仲間集め技術集結
横浜で参加したビジネスコミュニティで、「町工場の技術を広く発信したい」という思いを持つ埼玉県のデザイン会社C─OILING(シーオイリング)代表の大後(だいご)裕子さんを紹介されたのが始まり。その後、前から面識がありB to C商品を手掛けている株式会社極東窒化研究所(秦野市三屋)の武田康秀社長を誘い入れた。
「プロが使うような一般家庭向けの物を作ることで、工場の技術を伝えものづくりに興味を持ってもらえたら」と三者で方向性を模索。五洋工業の技術と極東窒化の窒化技術を組み合わせ、錆びにくく手入れしやすい鉄製の卵焼き専用フライパンの開発に乗り出した。
木製の持ち手は、取引のあるさがみ信用金庫のビジネスマッチングで知り合った有限会社武周(ぶしゅう)木工(もっこう)(小田原市)が担当した。試作を繰り返し、窒化処理と相性が良い鉄、一番美味しく卵を焼ける処理のやり方や鉄板の厚みを探した。
さらに、仕事で繋がりがある伊勢原市の株式会社磯崎絞(しぼり)製作所が加わり、丸型のフライパン開発にも着手。金属を曲げる加工技術「へら絞り」による幅の広がりと、ギフトショーへの出展決定が、開発をさらに加速させた。
こだわりのデザイン性
こだわったのは、デザイン性と使いやすさ。大後さんの「シンプルで軽いものがいい」という主婦目線の提案から、鉄板の厚みは1・2mmに設定した。木製の持ち手を繋ぐ部品も見た目を重視し、ネジ止めではなく五洋工業が溶接している。「ここもこだわりで、目に見える部分なので職人はだいぶ苦労しました」と酒村社長は話す。
魔法の鉄板フライパンは、鉄を窒化処理するため油馴染みが良く、焦げ付きにくい。テフロン加工と違い表面を硬化するため焦げ付いても金だわし等で洗え、錆びにくいので自然乾燥できるなど手入れが簡単という特性を持つ。卵焼き専用フライパンは微調整を、試作段階の丸型のフライパンは改良を施し、販売価格や販路を検討していく。
「ものづくりが好きなので、今後も楽しみながら新しいものを考えたい。色々な企業との協力やコラボで、取り組みが広がれば。従業員からもアイデアが出ているので、これがやりがいに繋がれば嬉しい」と、酒村社長は展望を語った。
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