二宮和也さんが主演を務めている本日12月9日から公開の映画『ラーゲリより愛を込めて』。二宮さん演じる山本幡男さんの次男・山本厚生(こうせい)さん(84・堀山下在住)に、遺書を受け取った1人として両親や戦争、今作品に対する思いを聞いた。
大連生まれの厚生さんが最後に父を見たのは、小学1年の時。満州鉄道に勤め、終戦1年前の徴兵で特務機関所属となった幡男さんがいたハルビンに、当時住んでいた新京から家族で会いに行ったのが最後だった。
幼かったためあまり記憶はないが、覚えているのは酔うと「この戦争は間違っている」と本音を漏らす姿と、ペチカ(ロシアの暖炉)で火傷した時に替え歌で慰めてくれた父の姿。「昔から成績優秀でロシア語堪能の文学好き、力仕事が苦手で釘一本打てない不器用な人だった」と、人となりを語る。
父の死の知らせが届いたのは、厚生さんが高校生の時だった。「45年しか生きていない父を思うと悔しい」と話し、「これは夫婦愛を描いた父と母の物語であり、戦争の記録でもある。多くの人、特に若い人に見て欲しい」と続けた。
強い母の姿
一方、女手一つで子ども4人を育てた母・モジミさん。「とても苦労していたけど、明るい人でよく歌っていたのを覚えている。試写会を見ましたが北川景子さんの演技が素晴らしく、母の雰囲気が良く出ていました。もちろん北川さんの方がきれいですが」と冗談交じりに話す厚生さん。妻のヒカルさんとも仲が良く、晩年はしょっちゅう孫に会いに来るなど楽しく過ごしていたという。
実はこの映画の原作となる辺見じゅんさんのノンフィクション小説『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』誕生は、ヒカルさんの存在が大きく関わっている。初めて幡男さんの話を聞いたヒカルさんは「これは昭和の歴史。仕事にしている人が必ずいるから話した方がいい」とモジミさんに進言。辺見さんの「昭和の遺書」に応募したところ、本人からの電話で書籍化となった。同書はノンフィクション賞を受賞しているが、受賞式で「この受賞は、山本幡男さんの素晴らしさが受賞したようなものだ」と審査員から伝えられたという。
託された思い
喉頭がんを患いながら一晩で約4500文字を書き上げた幡男さんの遺書は「本文」「お母さま!」「妻よ!」「子供等へ」の4通あり、収容所の仲間7人が内容を暗記し家族の元へ届けている。原作には書かれていないが、実は誰かが遺書の原本を書き写したノートが存在し、一字一句違わぬことが確認されている。今作はモジミさん宛の「妻よ!」を中心に構成され、厚生さんの兄・顕一さんに聞き取った原作にない描写もある。
一方で、厚生さんに響いたのは自分たちに宛てられた「子供等へ」。遺書には文化的・精神的に全国民が幸せになることを片時も忘れてはならないことが再三書き綴られており、「どれだけできていたか、これから何をすべきかを改めて考えさせられた」と話す。
秦野に越して6年。まちづくり活動にも携わる厚生さんは、本業の建築士としての知識を生かした「ひと裁ち折り」で作るハート=左上の写真内=を「平和の象徴として発信したい」と気持ちを新たにする。また、「この映画を秦野で上映できたら」と思いを語った。
秦野版のトップニュース最新6件
|
|
|
|
|
|