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秦野版 公開:2024年1月26日 エリアトップへ

秦野歴史たてもの探訪 国登録有形文化財などを巡る

文化

公開:2024年1月26日

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五十嵐商店店舗兼主屋
五十嵐商店店舗兼主屋

 少し歩けばタイムスリップしたかのような魅力ある建物に出合うまち、秦野市。市内には大正末期から昭和初期にかけて建てられた建物が多く点在し、現在「国登録有形文化財(建造物)」に登録されている建物は14件、昨年11月に新たに6件が答申された。今回は、本町地区と簔毛地区を中心に、在りし日の秦野を今日に伝える建物を紹介する。

本町地区を歩く

 50年を経過した歴史的建造物のうち、「国土の歴史的景観に寄与しているもの」「造形の規範となっているもの」「再現することが容易でないもの」などの要件を満たしたものが登録される国登録有形文化財(建造物)」。本町地区では「宇山商事店舗兼主屋」と「五十嵐商店店舗兼主屋ほか倉庫4棟」が2017年に国登録有形文化財として登録されている。昨年11月に答申された「旧澤良商店店舗兼主屋ほか土蔵1棟」「立花屋茶舗店舗兼主屋ほか蔵2棟」「保全堂薬局店舗兼主屋」の6件が新たに登録されれば、本町地区に12件の国登録有形文化財が存在することになり、建物探訪にはぴったりのスポットといえる。

 まず紹介したいのは、かながわの建築物100選にも選ばれている五十嵐商店店舗兼主屋(秦野市本町2の4の9)。五十嵐商店は1925年(大正14年)竣工。木造三階建てでモルタル洗出しとし、柱型や柱頭飾に意匠を凝らした古典様式風の外観で親しまれている。関東大震災後、秦野の商業地の中心だった本町四ツ角周辺では、復興の象徴として西洋古典様式やアールデコ様式などの影響を受けた建物が多く建築された。同建物はそうした建築物の一つだという。

 本町四ツ角から国道246号へと続く旧矢倉沢往還沿いに位置するのが宇山商事店舗兼主屋(寿町4の18)。2017年に市内の建築物で初めて有形登録文化財に登録された。竣工は1928年(昭和3年)。軒を深く前面に張り出した「出桁(だしけた)造り」や前土間などが地域の町屋の特徴を示しているほか、滑らかに光を反射させる「磨き漆喰」の壁、良材を用いた座敷部が当時の景観を伝えている。

 昨年11月に答申された6件の建物は、本町四ツ角交差点から台町交差点までの道路に面する。

 四ツ角交差点の南に位置する保全堂薬局店舗兼主屋(本町1の2626の1)は1928年建築、65年から74年の間に改修された。正面中央を薄く張り出し、三連の上下窓を開けた二階建て洋風店舗の西に、二階建て和風主屋を繋げている。出隅の柱頭飾の幾何学模様のレリーフや正面頂部のメダイオンなどの意匠にセセッションの影響がみられる。五十嵐商店と同じく、震災復興の象徴的な建築物の一つ。

 旧澤良商店店舗兼主屋(本町3の2838)は関東大震災後の復興により、前面の道路が拡幅された1926年に建築された。元乾物青果商で、現在でも袖蔵を持つ商家としての店構えを残し、復興当時の歴史的景観を担う貴重な遺構だ。土蔵は明治前期に建築され、中期に移築、大正後期に改修された歴史を持つ。

 旧澤良商店に隣り合う立花屋茶舗店舗兼主屋は、1865年(慶応元年)頃に建築。1927年に移築、35年・70年頃に増築された。店舗左の蔵は江戸末期、右の蔵は1908年に建築されたと見られる。通りに面した軒の低い町屋「立花屋半兵衛・茶舗」の大看板と茶蔵を持つ屋敷構えが江戸末期から明治初期の和風店舗・茶舗の姿を今に伝えている。

古い建築物を今に生かす

 本町地区で気軽に立ち寄れる文化財といえば、五十嵐商店店舗兼主屋だ。1階を「cafeいがらし」として、市内在住の小野文男さんが運営している。もともと歴史好きで、京都など有名観光地の寺社仏閣などを訪れていたという小野さん。年齢を重ねて身近な文化財に目が向くようになり、市内の文化財保護活動にも携わってきた。そんな中、縁あって飲食店勤務経験があった小野さんが、5年ほど前にオープンした同店の店長を務めることに。「当時の人々の営みや考え方などを知ることができるのが文化財の魅力だと考えています。五十嵐商店は関東大震災後の建築物で、震災への対策や当時のデザインの流行がよく分かる建物。この場所で、市の魅力や歴史などを発信していければ」と思いを語る。現在、主屋の2階は展示、蔵は会合や講演会などに使用している。大正生まれの建築物は今、歴史と文化の交流拠点として再び活用されている。

足を延ばして蓑毛地区へ

 本町地区から離れた蓑毛にある国登録有形文化財も2つ紹介していく。

 県道70号沿い、宝蓮寺が所有する蓑毛大日堂(蓑毛721)も2017年に登録された。大山の登山口にあり、山岳信仰の拠点として信仰を集めた大日堂は、1729年(享保14年)に建築された近世寺院。屋根を支える組物の造りを尾垂木付二手先とし、正面上にある向拝の手挟彫刻を牡丹とするなど華やかに飾っている。

 2020年に登録された旧芦川家住宅主屋(緑水庵)。1930年頃、今泉に建てられたと伝わる木造平屋で、91年に現在の場所(蓑毛269の2)に移築された。部屋は神奈川県下の民家にみられる典型的な「四間取り」で、登り梁を用いた軒組や、ガラス戸などに近代以降の特徴もみられる。外壁は割った竹を使用しており、良質な竹を産出した秦野の地域的特色も生かされている。

財産を受け継ぐ

 今回紹介した建物以外にも、秦野市には数多くの魅力的な古い建物が現存している。その一つ一つの建物に、人々の営みや歴史が詰まっている。これからも市の貴重な観光資源・財産として、先人が残した建物を大切にしていきたい。

来店客の約半数が市外の人だという同店。大正ロマンを感じたい大学生や、「生まれ育った家に似ている」と立ち寄る高齢者まで、年代もさまざまだ。コーヒーを始めとした飲食物はもちろん、市内を良く知る小野さんならではの観光案内や歴史語りなどのコミュニケーションも人気の一つ
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