高校野球 選手名520枚を手書き 秦野球場スコアボード
甲子園を目指して、球児たちが連日熱戦を繰り広げている高校野球神奈川県大会。7月15日の2回戦まで試合が行われた秦野球場のスコアボードには、今では珍しい手書きの選手名ボードが掲げられていた。
県大会の会場として使用される12球場で、スコアボードの選手名が電光掲示でないのはいまや秦野球場を含めて3球場だけだ。
緑色の地にくっきり太い白色の文字。直線的な独特の書体で書かれた選手名ボード。その全てを手書きで製作したのが高橋賢二郎さん(72・新町在住)と小泉馨さん(61・戸川在住)。市や県の野球連盟に所属し、長年審判として高校球児たちの汗と涙を間近で見てきた2人だ。
秦野球場で組まれる試合数によって変わるが、ひと夏に準備するボードは数百人分にのぼる。過去には高橋さんが1人で製作していた時期もあり、近年は高校生部員が当日に書き入れるなどしていた。
小泉さんは今年、県下で15人だけの県野球連盟審判部技術員を後進に譲り、自身の28年間の審判生活にひとつの区切りを付けた。そんなタイミングで高橋さんから声がかかったという。
県大会で1チームのベンチ入りは20人、1試合では両チームで40人。今大会、秦野球場では2回戦までのカードが組まれ、全部で520人分を用意した。
大会が開会するまでに、あらかじめ全ての選手名を用意しようとしても、秦野球場に備えてあるボードでは数が足りない。そこで今大会、初めてグリーンのラシャ紙に名前を書いておき、試合前にボードに貼り付ける方法を採用した。
登録メンバーの発表を待って、準備に入ったのが6月20日。縦110cm×横50cmの用紙に、バランスよく文字を収めるために、4つの角、中心線などの目印を付けて、幅5cmと3cmの2種類の刷毛を使いながら書いた。
小泉さんは「初めての経験で1時間で3枚仕上げるのがやっと。高橋先輩はこんなに大変な思いをされていたのかと」と振り返り苦笑い。文字を書き入れた後も、30分ほどの乾燥が必要で、日中の仕事を終え夜間に作業をしていた小泉さんが1日の目標枚数を仕上げるのはいつも明け方。自身の担当280枚分を完成させたのは開幕前日の7月6日早朝だった。
大会中、秦野球場のスタンドで試合を観戦した小泉さん。そこで、おそらくレギュラーではない3年生が試合終盤に出場し、選手の家族が記念にスコアボードにカメラを向ける光景を何度も目にしたという。
小泉さんは「選手の一生懸命な姿を思い浮かべると決して手は抜けなかった。1文字ひと文字すべてに気持ちを込めて書きました」と話し、「これまで高校野球に携わらせてもらった恩返しの気持ち。また来年も続けたい」と、スコアボードを見つめながら笑顔を見せた。
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