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 相模原で合議制裁判が行われていないのは「不利益」「不合理」だ――。「横浜地方裁判所相模原支部に合議制裁判と労働審判実施を求める協議会」が7月4日、座間市内でシンポジウムを開催した。市民に対し、地裁相模原支部で合議制裁判が導入されていないことによる問題点を示し、早期実現の必要性を訴えた。

 「市民にとって、他で受けられるサービスが受けられないことは不利益であり、是正しなくてはいけない問題」。そう語気を強めたのは、シンポジウムで趣旨説明を行った県弁護士会相模原支部の齋藤守支部長。

 3人の裁判官の協議によって事件を審理する「合議制裁判」。相模原市と座間市を管轄する横浜地方裁判所相模原支部(中央区富士見)では1994年の設立以来、1人の裁判官が審理する「単独制」が採用され、「合議制裁判」は行われていない。また2006年に開始した労働者と雇用主のトラブルを解決する労働審判も実施されていないのが現状だ。

 合議制裁判は単独制裁判に比べて「慎重かつ迅速な審理が受けられ、妥当な判断になる可能性が高い」とされている。医療過誤事件や建築紛争のような判断の難しい民事訴訟事件や殺人・放火などの重大な刑事事件などが対象になる。

負担大きく断念も

 相模原支部に合議制が導入されていないため、対象となる案件は横浜市中区の同地裁で審理せざるを得ない。また同支部での審理中に「合議制での審理が必要」と判断され、同地裁へ審理が移転(回付)される場合、再度初めから審理されることになるケースもある。

 同支部から同地裁へは公共交通機関で1時間20分程度かかるため、時間的にも金銭的にも負担が大きい。身近な場所で裁判を受ける機会を失い、司法による救済自体を断念する人もいるという。

47団体で協議会

 県弁護士会相模原支部はこれまで20年以上にわたり、市と協力しながら合議制の実施に向けて活動を続けてきた。17年から横浜地裁、21年からは最高裁を毎年訪問し、要望を訴えてきたが、実現には至っていない。

 こうした事態に対し、昨年7月に両市の市長を会長として各士業団体や経済団体、住民団体、奉仕団体など47の団体で構成される協議会が発足。1年間、周知活動や地裁、最高裁、法務省への訪問などに取り組んできたが、要望に対し裁判所からは「事件数・回付件数・移動時間・支部配属の裁判官数を総合的に考慮して判断する」として具体的な回答は得られていないという。

不合理性を指摘

 今回のシンポジウム開催の目的は、合議制と労働審判が導入されていないことによる問題点や導入されていないことの不合理性などを広く市民に周知し、理解促進を図ること。

 あいさつに立った座間市の佐藤弥斗市長は「地裁相模原支部設立当初も、市民の声があって設立が実現した。市民に合議制と労働審判の必要性を理解していただき、今後の活動を活発にしていきたい」と呼び掛けた。

 県弁護士会の岩田武司会長は「不利益を被っているのは市民であり、地元の企業。一日も早く合議制を」と訴えた。

 基調報告では▽支部の民事事件の新受件数は全国の203支部の中で14番目に多い▽支部から本庁までの移動時間の長さ▽県内の地裁支部のうち合議制が導入されていないのは相模原のみであり、全国の政令指定都市の中でも相模原のみである――などを理由に挙げ、同支部で合議制裁判が実施されていないことの不合理性が示された。

 また佐藤市長、相模原商工会議所の杉岡芳樹会頭、相模原市自治会連合会の竹田幹夫会長、齋藤支部長らによるパネルディスカッションでは、提出した要望書に対する同地裁の対応や協議会発足後の活動成果、今後の活動などについて意見交換が交わされた。

 竹田会長は「できる裁判とできない裁判があるということを知っている市民は少ない。実際に裁判する時にできないことを知るというケースもある」と問題点を訴えた。

 同協議会では現在、今年度の要望活動に向けて1万筆を目標に署名活動を行っている。今後もSNSでの周知活動や国会・県議会議員への支援要請などの活動を続けていくという。

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