横須賀・三浦版【8月30日(金)号】
作品の前に立つ石原さん

画家石原延啓さん 「龍神」現代アートで 大津諏訪神社に作品奉納

 由緒ある龍神が、現代アートでよみがえる――。故・石原慎太郎元都知事の四男で画家の石原延啓(のぶひろ)さんがこのほど、今年で鎮座1200年を迎えた大津諏訪神社(横須賀市大津町)に「諏訪の龍神」と題した作品を奉納した。同社奉祝記念事業の一環。作品は本殿に飾られ、9月28日(土)には一般向けのお披露目が行われる。

 作品は縦約2・7m×横約3・6m。先頃、緑色を帯びた深い青色の龍が拝殿神域境界部に取り付けられた。諏訪大社(長野県)に伝わる「龍神伝説」に着想を得て、諏訪神社の由緒や伝説をわかりやすく表現したという。

 上町にある「ヨコスカアートセンター」の管理運営を行う(株)コトマノの代表取締役・越中正人さんが延啓さんを招へいし、今回の企画が実現。延啓さんが同社の岩城純隆宮司の思いを汲み取り、龍神伝説をモチーフに約1年かけて制作を進めてきた。

 造形作品は画用紙や工作用紙で型を取り、その上に和紙や樹脂、漆などを重ねる手法を採用。奈良時代の作品に多くみられる「塑像(そぞう)」の技法を参考にしたという。

総代も参加

 制作や設置作業にあたっては氏子総代も参加。龍の色彩に採用した「納戸(なんど)色」も総代の意見を募ったという。

 制作を振り返り、「さまざまな人の思いが一つの作品に合流していくのが現代アートの醍醐味。その意味で非常に面白い取り組みだった」と延啓さん。総代の一人は「パーツが小さいので完成の想像がつかなかったが、ここまで大きな作品になるとは」と驚いた。

 延啓さんは逗子市出身。母方の祖父母が横須賀市出身で、2022年には越中さんが運営する同ギャラリーで作品展を開催し、別会場として同社でも作品の展示を行った。

 一般公開は9月28日(土)午後1時から5時まで同社本殿で行われる。予約不要で入場無料。

日中国交回復後の1985年、日中友好木蘭友の会として訪中した写真を持つ樋口さん

富士見町、樋口達さん(92) 満蒙開拓 今も記憶鮮明 敗戦後襲撃「怖さ通り過ぎ」

 1930年代から旧満州(中国東北部)を開拓する移民団「満蒙開拓団」の一員として海を渡り、戦後の動乱を経て帰国した人が横須賀市富士見町にいる。樋口達さん(92)。当時14歳で敗戦後、現地住民から度重なる襲撃を受けた。数百人規模で集団自決する開拓団もある中、無事に引き揚げることができたが、命の危険にさらされた記憶は今も鮮明だ。「戦争はしちゃいけない」。戦後79年を経て改めて思う。

 樋口さんは長野県富士見村(現富士見町)出身で、1941年に家族とともに国策の農業移民として黒竜江省木蘭(もくらん)県に入植。当時9歳だった。

 村長だった父・隆次さんが開拓団長を務め、現地住民とは良好な関係性を築いていたが、日本が敗戦し無条件降伏を受け入れると立場が一転。一部の住民から何度も襲撃を受けるようになった。

 おびえながら夜を明かす日々。「もう、怖いを通り過ぎちゃってる。いざとなったらやるしかない」。襲撃で犠牲になった仲間もおり、女性らには集団自決用の毒物が配られたという。

 食糧事情もひっ迫し、襲撃は苛烈さを増した。学校と病院を拠点に立てこもり、病院が武装した住民に包囲され絶体絶命の危機に陥ったが、駆けつけた中国共産党の軍隊に助けられ大勢の仲間は九死に一生を得た。それでも終戦翌年8月の引き揚げ時、入植時に千人いた開拓団は病死などで600人にまで減っていたという。

後世に警鐘

 戦後、日中関係が改善されると現地の国民学校の同窓生で「木蘭友の会」を結成。樋口さんも85年から2年ごとに訪中を重ね、仲間の供養に加えて公園建設や災害復興支援のための寄付もするなど、民間での日中友好に尽力してきた。

 当時の窮地を救われた中国を現在では「第二の故郷」と慕う。一方、国策の名の下に翻弄された当時の経験を踏まえ、こう警鐘を鳴らす。

 「危険にさらされ、犠牲になるのは国民。だから戦争は絶対に繰り返しちゃいけない」

メルキュール横須賀の総支配人として地域に開かれたホテルを目指す 竹株 枝里さん 横須賀市安浦町在住 39歳

地域巻き込むホテル運営

 ○…朝食のリニューアルやイベントの考案、広報への注力など、総支配人に就き1年余で数々の施策を打ち出してきた仕掛け人。「どんな企画をしようか、頭のなかで妄想が止まらない」。このほど市内の事業者らと協力し開催したマルシェと、本町一帯の歴史をたどる写真展には1日で数百名が来訪した。「宿泊だけじゃない、気軽に立ち寄れる地域の集会所のような場を目指したい」

 ○…大阪府出身。航空系の専門学校を卒業後、留学で学んだ英語を生かそうと中国上海の高級ホテルに入社。その後10年ほど海外のホテルを渡り歩いた。明るい人柄と仕事の手腕を買われ29歳の時、札幌のホテルの総支配人に抜擢。しかし日本のトレンドがつかめず、過剰な予約で客が宿泊できないミスを連発。そんな時、補填の宿泊先として協力してくれたのがメルキュールだった。「株ちゃんまたやってるね」といじられながらも温かく接してくれる風土に惹かれた。

 ○…男女平等の評価制度の導入やマーケティング部門の人材登用、横須賀にゆかりのある食事の提供、途切れないイベントの数々-。開業15周年の今年、さらに地域と密着し、愛されるホテルを目指すべく、改革を進めている。今後は、事業者や住民が集うマルシェを定期的に開催していく。

 ○…メルキュール横須賀は戦後、米駐留軍の一大娯楽施設として使用された「EMクラブ」の跡地に建つ。日本とアメリカの文化が融合してきた稀有な歴史を持つ一方で発信されていない実情にもどかしさを感じていた。「こんなに興味深いストーリーが眠っているのに」。開催中の写真展は、そんな思いが形になった。目指すのは、宿泊だけじゃない、地域一帯の歴史を残していくホテルだ。

報道陣の注目を集める中、地元住民らと握手を交わす小泉議員(中央)

笑顔で里帰りも心中は-

 次期総裁選への立候補が取り沙汰されている自民党の小泉進次郎衆院議員が8月24日、横須賀市大津町の大津諏訪神社例祭に姿を見せ、地元住民らと交流を図った。

 岸田文雄首相が立候補断念を表明してから一挙一動に注目が集まる小泉議員。この日も報道陣に囲まれながらの里帰りとなった。参道では例祭に参加する住民から「総理」と声を掛けられる場面もあったが、当の小泉議員は笑みを返すにとどまった。滞在時間は10分程度。家族連れから写真撮影を依頼される場面では、柔らかな表情を浮かべて応じていた。

 小泉議員は8月30日(金)に立候補を正式表明する見通し。総裁選には10人前後が名乗りを上げており、神奈川県内では、河野太郎デジタル相(衆院15区)が3度目の挑戦を表明している。

ライトアップされた空母を見学しようと訪れた来場者ら(8月25日撮影)

伊空母をライトアップ ヴェルニー公園に人だかり

 汐入町のヴェルニー公園でこのほど、海上自衛隊横須賀基地に寄港中のイタリア海軍の空母「カブール」の夜間ライトアップが行われ、晩夏のひと時を演出した。

 カブールは8月22日に日本へ初入港。海洋進出を強める中国を念頭に海自との共同訓練などを実施し、27日に出港予定。

 同空母は、全長236mで排水量は約2万7000トン。船名はイタリア王国初代首相の名前に由来する。

 寄港中の夜間、艦橋にはイタリア国旗の緑、白、赤のライトアップが施された。幻想的な雰囲気を漂わせる空母をひと目見学しようと、多くの人が公園を訪れ、カメラを片手に宵のひと時を楽しんでいた。

岩戸中の校庭に上がった花火(長時間露光で撮影)

岩戸の夜空に500発 地域主導で花火大会

 横須賀市岩戸地区の住民有志による「納涼花火大会」が8月23日、岩戸中学校を会場に行われ、約500発の打ち上げ花火が夏夜を染めた。

 主導したのは岩戸在住の長島正志さん。新型コロナ蔓延期に、子どもたちを励ます目的で企画され、今年で4回目。縁日や音楽ライブなどに加え、岩戸中の生徒が約3週間かけて覚えた太鼓演奏も行われた。長島さんは「子どもたちががんばったおかげで非常に盛り上がった。今後も住民主導で地域を盛り上げていければ」と話した。

 祭りのフィナーレを飾った打ち上げ花火は、湘南学院高校の教諭で花火師資格を持つ安部英次さんと、岩戸中卒業生の常田綾香さんが演出を担当。滝のように光が降り注ぐ長さ80mのナイアガラ花火やV字形に飛び出る連続花火などの圧巻の仕掛けに、観衆は息をのみ夜空を見上げた。

電動キックボード無料で体験 三浦半島でモデル事業

 三浦半島地域で電動キックボードと小型電気自動車(EV)を無料で体験できる県の「電動モビリティ促進キャンペーン」が8月26日から始まった。乗車を通じて交通渋滞の解消や観光推進などを図り、半島の脱炭素化を後押しする。

 県は横須賀、三浦、鎌倉、逗子、葉山の4市1町を「脱炭素モデル地域」に指定しており、自治体や企業と連携し、取り組みを推進している。

 キャンペーンでは利用者が専用アプリなどで所定の手続きを行い、クーポンコードを取得。三浦半島内に計37設置されたステーション(またはポート)でレンタルする際、クーポンを利用すると1回限定で小型EVが120分、電動キックボード(三浦半島内のみ走行可能)が45分無料になる。また特定のコワーキングスペース3カ所の利用者は繰り返しクーポンを利用できる。

 1月31日まで。詳細は県ホームページへ。

初のオフライン開催 eスポーツ杯決勝

 横須賀市が主催し、高校生がコンピューターゲームの腕前を競う「YOKOSUKA e-Sports CUP」の決勝トーナメントが9月1日(日)、いちごよこすかポートマーケットで開かれる。午前11時55分から。

 5回目の開催でオフラインでは初。予選には全国から81チームがエントリー。対戦型シューティングゲームの「VALORANT」で競う。観覧無料。

横須賀市教委 議決経ず教科書購入 市議会で追認議案提出へ

 横須賀市教育委員会は8月23日、今年度購入した教員用の教科書と指導書について、本来必要な市議会の議決を経ずに購入していたと発表した。9月市議会に追認を求める議案を提出する。

 市では4千万円以上の物品を購入する場合は議決が必要と条例で定める。今回対象になったのは4年ごとに改訂される教科書と指導書8416冊(約5800万円)と8159冊(約5700万円)の2件。市教委は教科書のデジタル化が進んだ影響で購入額が超過し、担当者が議決の確認を怠ったと説明。4年前と8年前をさかのぼって確認したところ該当はなかったという。

 市教委は「財産の取得基準について改めて全庁に周知を行うとともに契約のチェック体制を強化し、再発防止に努める」としている。同様のケースが県内外で相次いでおり、県内では同日までに厚木や小田原など5市が議決漏れを発表した。

京急線車両をモチーフにした新型オープントップバス

京急オープントップバス 三浦の魅力 再発見 車両・行路をリニューアル

 京浜急行電鉄は、9月5日(木)から新型2階建てバス「KEIKYU OPEN TOP BUS MIURA」の運行を開始する。これまで三崎口駅発で運行されていた便と車両は8月21日をもって運用を終了。出発地を三浦海岸駅に変更し、行路も新設した。

 今回新設されたのは3コース。江奈湾や剱埼などの海景色を楽しむ「みうらブルーコース」、引橋や松輪などの田園地帯を経由する「みうらグリーンコース」(いずれも片道便)のほか、三浦市全体を周遊する「みうらホワイトコース」がある。「三崎口駅を起点にする観光客が多く、三浦海岸駅の魅力を改めて発信したい」と同社担当者。観光の拠点を移すことで同駅周辺の誘客促進を図る。切符は同駅前に設置される案内所で購入できるほか、京急線の企画きっぷ利用の場合はインターネットから予約ができる。

原子力空母配備 賛否「どちらとも」が46% 市民団体が調査報告

 米海軍横須賀基地に配備されている原子力空母が今年中に交代することに関して、「原子力空母母港化の是非を問う住民投票を成功させる会」は8月24日、配備の是非を問うアンケート調査の結果を報告する集会を横須賀市総合福祉会館で開いた。賛否については「どちらともいえない」が46・1%で最も多く、賛成は23・8%、反対は30・1%だった。

 アンケートは今年4月から6月の間に街頭インタビューや調査会社などを利用して実施。内容は【1】横須賀に原子力空母が配備されていることを知っているか【2】米軍・日本政府・横須賀市の安全対策は十分か【3】横須賀への配備についてどう思うかの3項目を問うもので、合計4230人(うち横須賀市民3614人)が回答した。

「判断材料が不足」

 配備の賛否について問う【3】では、半数近くが「どちらともいえない」と回答。これに対し同会共同代表の呉東正彦弁護士はその中の「判断材料が不十分」とする意見に着目した。米国内の造船所では放射能漏れなどの事故が発生している一方で、日本国内でのトラブルは情報が公開されずブラックボックス化していることを踏まえ、「市民に危険性が周知されにくい構造となっている」と分析した。

 また、【1】では10代の78・2%が「知らなかった」と回答(全体では29・1%)。呉東氏は「原子力空母に関する市の防災対策や教育も限定的で、むしろ観光資源化しようとする政策が安全上の問題を無関心化させているのではないか」と市の姿勢に疑問を投げかける。横須賀に初めて配備された2008年頃は住民投票直接請求運動に当時の市長や議会も関わり、社会問題として議論されていたが、配備から16年が経ったことで、「母港化が既成事実化しているのでは」という記述も見られた。

 呉東氏は「身近な場所に原子炉があることを、特に若い世代に知ってもらい、考えてもらうため活動を続けていきたい」と今後の方針を示した。

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「オープンマインド」言葉は不要

 YRPに進出している日本エア・リキード合同会社(横須賀市光の丘2)に勤務するフランス人研究者、イゴール・レプリンスキさん(28)と妻のノエルさん(27)が地域との交流を楽しんでいる。

 8月25日に開かれた「北下浦納涼ふるさとまつり」でイゴールさんは法被をまとって太鼓を叩き、浴衣姿のノエルさんは櫓(やぐら)の上で偶然居合わせた上地克明横須賀市長と盆踊りに興じた。

 電子チップの開発を担当しているイゴールさんはフランス・パリ市から今年2月に赴任してきたばかり。現在、長沢にある一軒家に夫婦で暮らしている。日本文化を理解したいと地域の活動に積極参加しており、太鼓の叩き手を募っていた台町内会の回覧板を目にして練習に参加。2週間の稽古を積んでこの日の本番に挑んだ。

 地域も2人を温かく迎えている。コミュニケーション手段として携帯電話の翻訳アプリを活用しながら草の根の国際交流を実現している。「とてもラッキーな時間を過ごせている。10月のよこすかみこしパレードにも参加する」とイゴールさんは笑顔を見せた。

往時の景色を懐かしむ来場者

メルキュール横須賀 本町の足跡たどる写真展

 横須賀市本町のメルキュール横須賀で「未来へつなぐヨコスカ写真展」と題した写真展が9月30日(月)まで1階ラウンジで行われている。

 同ホテル内にある創業115年の「横須賀写真館」が撮影・保存していた、戦前の本町の風景や現在の同ホテルの位置にあった海軍下士官兵集会所(のちのEMクラブ)の写真など展示しており、本町一帯が歩んできた歴史をなぞっている。

 同館の野坂洋平代表が、同ホテルの竹株枝里=人物風土記で紹介=総支配人に写真展の開催を持ちかけたところ、「地域の歴史が詰まったこの場所をもっと知ってほしい」と実施に至った。

 同館は戦前、日本海軍の撮影をメインとしており、1933年に東京湾横浜港沖で行われた軍事演習の写真や明治初期頃の戦艦三笠、コースカベイサイドストアーズにあった海軍工廠のシンボルであったガントリークレーンの写真なども公開している。

 展示に訪れた市内在住の76歳の女性は、「20代の時、結婚を機に汐入町に来た。当時は日本人と米軍関係者が文通するための翻訳屋さんや、スーベニアショップなどが並んでいた」と往時の景色を回顧した。

手先の器用さを自負する高瀬屋さん。手掛けた作品群を手に

鉛筆彫刻作家の高瀬屋さん 挑む精密・極小の世界

 鉛筆の芯に文字やデザインを刻む「鉛筆彫刻」と呼ばれるアートワークに長浦町在住の高瀬屋親盛(ちかもり)さんが挑んでいる。

 芯は硬さによって直径に違いがあるが、高瀬さんが用いるのは主に3〜4ミリ。極小のキャンバスにアートナイフを駆使して思いのままデザインを施していく。

 この日、持ち出してくれた作品のひとつに「トンボ鉛筆」がある。羽を広げたトンボマークにカタカナと漢字を組み合わせもたので、刃を入れる力加減と集中力がポイントという。

 創作のきっかけは新型コロナ期の巣ごもり生活。「テレビで偶然見かけた『鉛筆彫刻』を暇にあかせて見よう見まねで試してみたところ、すんなりできてしまった」

 これまでに手掛けた作品は約100本。カタカナ文字だけなら4時間程度で仕上げることが可能だそうだ。

 高瀬さんの作品は横須賀市大滝町にある「クラシゲ宝飾」のショーケースに飾られている=写真左。折り紙で作ったミニチュアの胡蝶蘭もあり、その出来映えに店主の倉茂紀夫さんも舌を巻いた。店外からも眺めることができる。
かながわ信用金庫会長で全国信用金庫協会会長に就いた平松廣司氏

全信協会長就任の平松氏 「信用金庫の伝道師目指す」

店舗基盤に密着度高める

 中小零細企業を支える大きな役割を持ち、地域経済や地方創生のけん引役を担う「かながわ信用金庫」(本部=横須賀市小川町)の理事長が16年ぶりに交代した。ICTの普及やDX化など金融機関を取り巻く環境は大きく変化しており、時代に即応した新しい金融機関の形をつくり出すという。平松廣司会長にトップ交代の決断と全国信用金庫協会会長就任の意気込みを聞いた。

 ──理事長職を退き、会長に就いた。

 「『かながわ信用金庫』に名称変更して丸10年。この間に念願だった県央の綾瀬に出店し、横浜関内に営業拠点となる横浜営業部も開設。預金量は1兆円を超え、強固な経営基盤の確立とともにネームバリューの向上が図れた。16年前の理事長就任時に描いた経営戦略の青写真を7〜8割実現できた。信用金庫は非営利法人の協同組織であるが、企業と同様に成長がなければ存続できない。DX化などへの対応も不可欠。組織として適切な新陳代謝が必要であり、その時期だと判断した」

 ──新理事長に高瀨清孝氏を起用した。

 「地域に精通し、営業に長けた人物。人から好かれる性格で取引先などからの信頼も厚い。金庫の目下の課題は基盤の拡充だ。個人も法人も一つでも多くの取引先を増やすこと。これを実現するリーダーとして適任であると考え、託すことにした」

 ──新型コロナを経て企業も社会も大きく変化した。

 「(コロナ禍では)経済活動のストップや新しい生活様式への対応など難しい部分もあったが、地元企業のサポートに積極的に乗り出したことで信頼関係がより深まった。伴走型支援も経験と実績を積み上げることにつながり、金庫としての強さが増したと感じている。コロナの試練が信用金庫のサービスを新しい段階に引き上げた」

 ──物価高に人手不足と地域経済を取り巻く環境は依然として厳しい。横須賀・三浦は人口減少にも直面している。

 「金融機関も同じ。そうした条件の中でしのぎを削っている。経営判断として合理化や効率化を推し進めることは一つの方策だが、当金庫は『店舗なくして地域を守ることはできない』というスタンス。信用金庫は地域のオアシスのような役割を持っている。既存店の撤退は考えていない。地域の金融機関として踏ん張りどころだ。その一方で横浜・藤沢といった成長が見込めるエリア戦略を同時に進めていく。毎年50人程度を新卒採用しており、人材への投資も重要視している」

 ──新理事長に期待することは。

 「高瀨理事長は私が唱えた『強くてやさしい信用金庫』のスローガンを継承していくことを表明してくれた。この言葉の意味は深い。全職員への理解と浸透を目指してほしい」

 ──全国信用金庫協会の会長に就任した。

 「全国254ある信用金庫の地位向上と中小零細企業支援のための要望などを政府や関係機関に行う組織。責任ある地位だ。全国には地銀に負けない取引量を誇る都市部の金庫があれば、小規模ながら地域との良好関係を築いて存在感を示している地方の金庫もある。日本経済を支えているのは国内全企業の99%を占める中小零細企業だ。融資だけでなく、経営改善や事業再⽣、事業承継が重要性を増しており、サポートを行う人材の確保と育成を信用金庫全体で取り組む必要性を感じている。地域や顧客に密着したサービスの提供こそが信用金庫の存在意義。営業担当がオートバイを走らせて担当エリアをくまなく回り、フェイス・トゥ・フェイスの対応していく原点のスタイルだ。信用金庫のあるべき姿を説いていく伝道師として全国各地に出向き、信用金庫のブランド力アップに全力で取り組んでいく。現地で見聞きした事例などは組織の力を高めることに活用したい」

意見交換をする市内の児童ら

三浦市 子どもの声を市政に 小中校生が市に提言

 三浦市は8月22日、子どもの意見を市政に反映させるため、「三浦市こどもまんなか市民会議」を南下浦町にある「チェルSeaみうら」で初開催した。

 2023年4月に施行された国の「こども基本法」に則って行われたもの。市独自の取り組みとしてより率直な声を拾い上げるため、「将来どんな三浦市に住みたいか」をテーマに子どもだけで意見を出し合う部会を事前に実施。市内の小学5年生から中学3年生まで15人が参加し、ここで挙がった市への提言を代表の児童らが22日に市や子育て支援などを行う事業者へ投げかけ意見交換を行った。

 名向小5年の星夏海さんは、海を生かした地域振興の重要性を発表。市の人口減少に触れ、「海岸のごみを拾いきれいにすることで観光客や人口の増加に繋げられるのでは」と話した。

 保護者代表として参加した市内在住の男性からは、「海は魅力的な遊び場だが、安全面を考慮した室内の遊び場の整備も進めてほしい」という意見もあった。

 子どもたちからは市外向けの広報手段として、「自然や住環境を電車内の広告やSNSでもっとアピールしてみては」という案も挙がるなど盛り上がりを見せていた。

クロマチックハーモニカ 山下伶の魅惑の世界

 横須賀三浦教育会館では9月15日(日)、クロマチックハーモニカ奏者の山下伶さん=写真=を迎えてコンサートを開く。

 クロマチックとは半音階を意味する言葉。ハーモニカ1本で広い音域をカバーすることができるため多彩な演奏が楽しめる。当日は山口百恵さんのヒット曲『秋桜』ほか耳馴染みのあるナンバーを中心に演奏する。

 会場は横須賀市日の出町にある同会館。午後2時開演。入場料2千円(定員150人)で予約席。問い合わせは同会館【電話】046・824・0683。

天井に映し出された星座を楽しむ親子ら

佐原町内会 満点の夜空、室内で 夏休み企画、70人が楽しむ

 和室で寝ころびながら星空満喫――。

 地域の親子らを対象にした夏休みイベントが8月17日、佐原町内会館で開かれた。佐原町内会(石川宏会長)の主催。室内に星座や天体を映し出し、鑑賞してもらう趣向で計76人が夏の夜空を楽しんだ。

 事業者が地域コミュニティーを支える団体に対し、運営ノウハウなどを試験的に無償提供する県の「コミュニティ再生・活性化モデル事業」の一環。この日は宇宙ベンチャーのアストロコネクト(川崎市)が協力。参加者らは暗くした部屋に寝転び、はくちょう座やこぎつね座、いるか座など夏の代表的な星座が次々に映し出されると歓声を上げて喜んだ。星座の形から名前を予想するクイズもあり、参加した山下涼我さん(15)は「あまり空を見上げることがなかったけれど、すぐに見られる星を教えてもらったので、探してみたい」とほほ笑んだ。

世界の巨匠、ミシマを振る 9月28日、みなとみらいホール

 神奈川フィルハーモニー管弦楽団が9月28日(土)、横浜みなとみらいホールで定期演奏会を開く。午後2時開演。

 演目は、ドヴォルザークの交響曲第7番二短調や映画「Mishima」より現代音楽の巨匠フィリップ・グラス作曲”M”Concertoほか。同曲は日本初演。

 指揮はグラスの作品で多数コンビを組む巨匠デニス・ラッセル・デイヴィス氏、ピアノに滑川真希さんを迎える。S席7千円、A席5千円、B席3500円。チケット申し込みは神奈川フィル・チケットサービス【電話】045・226・5107。

読者プレゼント

 同公演に本紙読者20組40人をご招待。ハガキに氏名・郵便番号・住所・電話番号を明記の上、〒231―0023横浜市中区山下町46番地第1上野ビル1階・神奈川フィル事務局「タウンニュース係」へ。

 9月6日(金)必着。当選は発送にて。

ジャガイモの収穫

横須賀商議所の体験会 農業を仕事に 10・20代の若者対象

 横須賀商工会議所は、農業に興味のある10代・20代の若者を対象にした「農業体験会」を9月21日(土)と10月26日(土)に実施する。

 次世代の農業を担う人材の育成を目指した試みで、実際の作業や三浦半島の若手農家との交流を通じて魅力にふれてもらう。就農を考えている人には、職業としていくことに対する不安や疑問点の解消の場としていく。9月21日は横須賀市須軽谷のベルツリーファーム、10月26日は三浦市南下浦の石井みかん園が体験フィールドとなる。

 両日とも三浦海岸駅改札前に午前8時50分集合。終了は午後3時。参加無料で三浦半島の海の幸・大地の恵みを詰め込んだ「地産地消弁当」も用意される。

 希望者は同商議所のホームページ(【URL】https://yokosukacci.com/)からエントリー。

江戸城大手門

OGURIをあるく 〜小栗上野介をめぐる旅〜第14回 駿河台編【5】文・写真 藤野浩章

「たとえ一時しのぎはできたとて、再び同じ事態が起るのは必定(ひつじょう)でございます」(第一章)

     ◇

 江戸に帰った小栗はさっそく老中・安藤信正(のぶまさ)に対馬藩の国替(くにがえ)を提案するが、「内外ともに多事多難なこのご時世に、煩雑な手続きを要する国替などやっておれぬ」と一蹴されてしまう。

 それに加え、忠順(ただまさ)を激怒させたプランが進行していた。ロシアを追い払うためにイギリスに仲介を頼むというのだ。

 直前に江戸高輪(たかなわ)で発生した東禅寺(とうぜんじ)事件(1861)で、攘夷(じょうい)派の志士によりイギリス公使オールコックが襲撃された事を逆手に取り、ロシアを追い払えばイギリスは日本の味方であるとアピールできるはず、という奇策だった。小栗がはるばる対馬に行っている間に、江戸ではすでにストーリーができ上がっていたのだ。この案を立てたのは、他ならぬ勝海舟(かつかいしゅう)。安藤からその名を聞いた小栗の心中は穏やかではない。

 しかもイギリスは最初に対馬を狙った国。「それは前門の虎を追っ払って、後門(こうもん)の狼(おおかみ)を迎えるようなもの」と彼は食い下がる。せめてアメリカを頼る方がよっぽど良かったが、ちょうど南北戦争に突入し、とても外国に構っていられない状態。"ヒグマ"に対抗できる力が無い日本は"虎"に頼るしかなかった、というわけだ。

 小栗が考える抜本的な策は理解をされるのだが、ほんの少しずつの歴史の積み重ねの中で、結局は"小手先"の案に押し切られてしまう。彼が命を懸けて戦ったのは、外国だけでなく身内でもあったのだ。

 忠順は安藤と激しい口論の末、ついに外国奉行を辞することになる。