中区・西区・南区版【9月5日(木)号】
生理用品寄贈の様子=提供写真

若者の「生理の貧困」支援 3者で高校に用品配布

 経済的な理由などで生理用品を購入できない「生理の貧困」。これまで、(公財)横浜市男女共同参画推進協会とコメットテクノロジーズ・ジャパン(本社=神奈川区)は生活に困窮している人へ生理用品を配布し、この問題に取り組んできた。今年度から新たに(公財)よこはまユース=中区太田町=とタッグを組み、高校生へ向けた支援を行う。



 厚生労働省が2022年に発表した全国の18歳から49歳の女性を対象とした調査では、「新型コロナウイルス発生後、生理用品の購入・入手に苦労したこと」が「よくある」「ときどきある」は回答者の8・1%。年代別では30歳未満、世帯年収別では300万円未満で高くなっていた。

 今回の取組では、同社が約700パックの生理用品を寄贈。夏休み明けからよこはまユースと連携する市内の高校3校に配布され、経済的な理由で購入を控える学生へ届けられる。担当者は「お金や将来への不安もたくさんあると思うが、応援してくれる大人が周りにいると感じてもらえたら」と話す。

 同協会が運営する市男女共同参画センター横浜南=南区南太田=の秋葉由美さんは「生理について話しにくい、支援してほしいと声をあげづらい雰囲気がまだ社会にあるのでは」と話す。同センターは男性向けに女性特有の健康課題についてのセミナーを開催するなど、今後も理解促進を進めるという。

社会貢献団体が多様化 社団法人での設立進む

 地域社会の課題に取り組む活動団体の組織体が近年多様化している。横浜市内ではNPO法人が2019年をピークに減少傾向にある中、一般社団法人などの形態で立ち上げるケースが近年目立っている。

 阪神淡路大震災をきっかけに始まったNPO法人制度。市内ではまちづくり団体や福祉や子育て支援団体、地区センターの指定管理や放課後キッズクラブの運営を担うNPO法人などがある。都道府県と政令指定都市が認証権と監督権を持つ。

市内NPOは減少傾向

 横浜市内のNPO法人数は2007年3月には896団体だったが、翌年には1千団体を突破。以降も毎年増加していたものの、2019年10月末の1542団体をピークに減少傾向に転じ、今年6月末現在で1482団体となっている。

 NPO認証を所管する横浜市の市民協働推進課の担当者は「解散が急増したわけではなく、新規設立が減っているという印象。地域活動の担い手の高齢化などが影響しているのでは」と話す。併せて同課が影響の一つと考えるのが、NPO法人以外の活動団体の増加。一般社団法人の場合、NPOと比べ少人数で設立でき、所管庁による認証審査もない。非営利型の場合、収益事業以外の所得は課税対象外となる。

 2021年に一般社団法人を設立した廣瀬貴樹さんは、設立までのスピード感を理由に社団法人を選んだ。だが「NPOじゃないのかと怪しまれたり、補助金がNPO限定だったりと苦労した部分もあった」と話す。

 市の市民協働推進センターでは団体設立の相談が毎月20件近く寄せられる。同センターでは「各法人の特徴を知らずに設立して合意形成や資金難で苦労する団体が多い。社会課題にどう向き合うかで法人格を選ぶのが本来の趣旨。しっかり準備をした上で選択してほしい」と釘を刺した。

「関東大震災時朝鮮人虐殺の事実を知り追悼する神奈川実行委員会」の共同代表を務める 山本 すみ子さん 都筑区在住 85歳

一途に追う歴史の真相

 ○…「100年もたったのにどうして認めないのかしらね」。横浜市内で3千人以上の命が奪われたという関東大震災発生直後の朝鮮人虐殺。当時の公文書や史料を調べつつフィールドワークを重ね、真相解明に尽力してきた。「あちこちで殺されたことは明らか」。そんな中でも虐殺を認めない人は存在する。「なかったことにされると困るんです」。穏やかに、きっぱりと言い切る。

 ○…震災50周年となった30代半ば、メディアで様々なニュースが取りあげられる中、朝鮮人虐殺は横浜でもあったのかと疑問を持った。足を運んだ図書館で、司書が見せてくれたのは子どもたちの作文。寿警察署や中村橋といった地名を記し、暴力が生々しく描写されていた。「これは私たち教師が知らなければいけないこと」。そんな思いで、教員仲間と立ち上げた研究会で調査を発表するなど行動を開始した。

 ○…震災90周年の節目の年、市民の手で追悼会を行おうとわずか5人で実行委員会を立ち上げた。100周年となった昨年の追悼式には、約330人が参加。今年8月には神奈川学園中高と朝鮮学校の生徒が、虐殺があったとされる反町公園に碑を建てたいと、横浜市に要望を出した。こうした動きに「胸を打ちます」と一言。次世代に期待する眼差しは温かい。

 ○…関心を寄せ賛同する人が増える一方で、ヘイトスピーチやヘイトクライムは激しさを増したように感じる。90年代に朝鮮人虐殺を記述した中学生向けの副読本からは、約10年前に「虐殺」の2文字が消えた。「昔に比べひどくなっているよう。反省がないまま、差別が続いている」と危惧する。それでも、歴史的事実を追い求める気持ちは揺るがない。「とことんやるしかないですよね」と微笑んだ。

バイクを見送る関係者ら

配達時に子ども見守り 市と日本郵便が連携

 日本郵便(株)南関東支社は、同社が保有する車両を活用した「こどもの安全見守り活動」を市内全域で実施する。8月28日には日本大通の横浜港郵便局で出発式を行った。関係者が集まり、郵便配達に向かうバイクを手を振って見送った。

 この取り組みは配達に使うバイクと車の約2750台に「こどもの安全見守り中」と書かれたステッカーを貼付。局員が異変を発見した際に警察や消防へ通報する「緩やかな見守り」を行うもの。

 同社の経営管理本部総務部長の落合保浩さんは「郵便局の機動力を生かした活動。ステッカーを付けて走ることで『見せる防犯』として皆様の意識向上にもつながれば」と話した。

 横浜市と同社は2021年3月に「地域活性化に関する包括連携協定」を締結。郵便局内に特殊詐欺対策や横浜国際園芸博覧会のポスターを掲示したり、市民の熱中症対策のための休憩場所を提供するなど、市民サービスの向上や地域の活性化に連携して取り組んできた。

 市市民局地域防犯支援課長の丹羽仁志さんは「地域を回っている郵便局員だからこそ、小さな変化にも気づいてもらえるのでは。横浜市にはたくさんの企業があるので、そうした方とも連携を広げ、安心安全を守っていきたい」と話した。

横浜市 定額減税補足やコロナワクチン接種などで183億円の補正予算案

 横浜市は定額減税を補足する給付金や新型コロナウイルスワクチン接種の事業費など盛り込んだ総額183億9600万円の補正予算案を9月10日に始まる第3回市会定例会に提出する。

 定額減税の補足給付金は、減税可能額が所得税、住民税の課税額を上回る人に支給するもの。今年度の住民税課税情報に基づいて算定した結果、給付対象者が当初見込みの約45万人から約53万人に増えたため、115億6300万円を給付費として増額する。

 コロナワクチンは、国が想定する接種単価が見直されたため、40億6700万円を充て、自己負担額を3千円とする。対象は65歳以上か60〜64歳の一定の障害がある人で、10月から来年1月末までに49万回の接種を見込んでいる。

 補正予算案などの議案の議決は9月25日。その後は2023年度の決算審査が行われる。

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9〜11月号の表紙

神奈川県が文化芸術の情報冊子発行 「かながわ県民文化祭」を特集

 神奈川県は、県内の魅力的な文化芸術イベント情報をまとめた冊子、「イベントカレンダー」の9月〜11月号をこのほど発行した=写真。

 文化芸術の魅力で人を引きつけ、地域のにぎわいをつくり出すマグネット・カルチャー(マグカル)の取り組みを推進している県が発行する冊子で、毎号、県内文化施設の公演や展示情報などがカレンダー形式で紹介されている。今号では、9月から県内各地で行われる「かながわ県民文化祭2024」を特集。県、各市町村で開催される主なプログラムを紹介している。また、アンケートに答えてチケットやカレンダーが当たるプレゼント企画も実施している。

 冊子はA4判で、オールカラー32ページ。県内各文化施設や一部の商業施設、自治体などで無料で受け取ることができる。

救命講習の様子

横浜市消防局 救命講習の受講者を募集 10〜12月分を受付

 横浜市消防局が10月から12月に行う救命講習の予約受付が始まっている。受講対象は市内在住、在勤、在学(中学生以上)者。

命をつなぎ留める

 救命講習とは、突然の病気で心臓が止まって倒れた人や、大けがをして大出血をしている人を発見した時、救急車が到着するまで、その人の命をつなぎ留めるための応急手当法を身に付けるもの。 病気やケガで心臓が止まると、約4分で脳の細胞が死んでしまうといわれている。救急車が到着するまで、心肺蘇生法などの応急手当をいかに早く始めるかが傷病者のその後を左右することになる。

 横浜市内では救急車の出動件数が増加傾向にあり、119番通報から救急車が現場に到着するまで平均8.8分かかっている(2024年上半期の発表データ)。この約9分間にできる応急手当を学ぶのが救命講習だ。

 主に成人に対しての応急手当を学ぶ「普通救命講習I」で空席のある(9月2日時点)開催日は10月15日(火)、25日(金)、11月15日(金)、18日(月)、12月6日(金)、12日(木)。教材費は1,200円。会場は横浜市民防災センター=神奈川区沢渡=または長津田消防出張所=緑区長津田=で、開催日により異なる。定員になり次第、受け付けが完了。

 小児・乳児・新生児に対しての応急手当法を学ぶ「普通救命講習III」やさらに詳しい応急手当を学ぶ「上級救命講習」なども開催される。

 申し込みは予約ページ(https://sy-koushu.city.yokohama.lg.jp/kyumei/)または救命講習受付(市防火防災協会)【電話】045-714-9911。10人以上の団体の場合は、各消防署での開催も可能。

台風10号 横浜市内で倒木、護岸変形の被害

 大雨や突風などで各地に被害をもたらした台風10号に関し、横浜市内では倒木によって家の一部が壊れるなどの被害が出た。

 市の発表によると、緑区東本郷で倒れた木によって家の一部が壊れたほか、瀬谷区阿久和南では川の護岸の一部が変形した。南区では永田東で12㎥の土砂が流出し、中里ではマンホールの枠が陥没した。

 8月30日に土砂災害のおそれがある区域に避難指示(警戒レベル4)が出され、市内94カ所の1482世帯・3101人が対象となった。ほかにも、浸水被害のおそれがある地域にも高齢者等避難(警戒レベル3)が発令された。地区センターや学校など、61カ所で避難所が開かれたが、避難者は11カ所、14世帯・23人だった。避難所は9月1日午前に閉鎖された。

 消防局の雨量計では、戸塚区の大正消防出張所で8月31日午後6時からの1時間に37ミリ、都筑区の仲町台消防出張所では29日午後2時からの24時間で214.5ミリを記録した。

ラーメン+半チャーハンセット

町中華へGO!【6】 西区藤棚「大千居」はゆったり広々とした店内 本紙記者がランチ紹介

 どの町にもある、古くから地元に愛される中華料理店。「町中華」が注目を集める中、地域を回るタウンニュース記者が中区、西区、南区にある中華料理店で食べるランチを紹介。さあ、町中華へGO!

 西区藤棚に連なる商店街の一つ「サンモール西横浜商店会」にある「中華大千居」。外から見ると横長の店舗が印象的。店内はテーブル数も多く、ランチ時だけでなく、夜もゆっくりできそう。

 ランチタイムの定番とも言える「ラーメン+半チャーハン」のセットはサラダも加わり、見た目も鮮やか。ラーメンはシンプルでチャーハンとの相性も良い。半チャーハンも「半」とは思えぬボリューム。

■西区久保町20-11【電話】045-251-6659(メニュー、価格は取材時のものです)

8月31日の「ドラクエ花火」打ち上げ可否は当日午後3時発表 横浜スパークリングトワイライト

 横浜港周辺で8月31日(土)に予定されている打ち上げ花火のイベント「横浜スパークリングトワイライト」について、主催する実行委員会は台風10号の影響を見極めながら、当日午後3時に開催可否をサイト(https://www.yokohama-sparkling-twilight.com/)で発表するとした。

 予定では午後8時から5分間、新港ふ頭から花火を打ち上げることになっている。

 同イベントは8月10日の開催も台風5号の影響で中止になっており、31日はその時に行う予定だった「ドラゴンクエスト」をイメージした花火が打ち上げられる。

28チームの頂点に立ったメンバー

Y校硬式野球部OB会 13年ぶり3回目の優勝 マスターズ甲子園県大会で

 8月25日に行われた「2024マスターズ甲子園神奈川大会」でY校硬式野球部OB会が13年ぶり3回目の優勝を果たし、見事28チームの頂点に立った。

 前半戦(34歳以下 、4イニング)と後半戦(35歳以上 、5イニング)で勝敗を決める同大会。決勝戦では東海大相模高校OB会と対戦した。前半を6対2でリードし迎えた後半。守備の乱れで3点を奪われるも好走塁やタイムリーヒットで追加点を奪い、11対5で勝利を決めた。

 スタンドには同校を応援する多くの人が集まった。OBバンドの校歌や応援歌の演奏も選手を後押し。会長の長谷部淳一さんは「年代の違うOBが一体となり優勝できて嬉しい。現役生徒もOBの頑張りに刺激を受けてぜひとも頑張ってほしいです」と話した。

 24年度は県に代表枠がなく全国出場はできないが、この優勝で25年度の甲子園決定戦への権利を手にした。長谷部さんは「来年勝利し、県代表として甲子園出場を果たしたい」と抱負を述べた。
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秋の月が観賞できる

三溪園 秋の夜に観月会 9月14日から、音楽も

 三溪園=中区本牧三之谷=で日没後に音楽と月見を楽しむ「観月会」が9月14日(土)から18日(水)まで開催される。

 観月会は三溪園の秋の風物詩だったが、コロナ禍の影響で2022年から中止されていて、今回3年ぶりの開催となる。

 期間中の5日間は日替わりで、いずれも午後6時台から園内の臨春閣で雅楽、筝曲、サックスとピアノ、薩摩琵琶、篠笛の演奏が披露される。臨春閣は江戸時代に建てられたと伝えられる重要文化財。22年に屋根の葺き替えなどの保存修理工事が終わり、装いを新たにした。

 三溪園は実業家の原三溪によって創られ、古建築と自然が調和した四季折々の景色が楽しめる日本庭園として名高い。

 入園料は大人900円。観月会への参加は無料。問い合わせは三溪園【電話】045・621・0635。

脇雅昭氏

参院選 自民が脇雅昭氏擁立へ 42歳、前県局長

 来夏の参院選神奈川選挙区(改選定数4)に自民党が前県産業労働局長の脇雅昭氏(42)を擁立することを決めた。

 脇氏は東京大学大学院を卒業し、2008年に総務省入省。13年に神奈川県へ出向した後、県へ転籍していた。自民党県連の公募に応募し、41人の中から選ばれた。

 脇氏は8月29日の会見で「県で働く中で国だからできることがあると感じた。行政のデジタル化を進めたい」と述べた。

大会のポスターを手にする葛西選手

プロレス「フリーダムズ」が9月15日 横浜武道館で15周年記念大会 横浜市在住・葛西純選手が意気込み

 プロレス団体「フリーダムズ」の旗揚げ15周年記念大会が9月15日(日)に横浜武道館で行われる。節目の大会を前に、旗揚げ時からのメンバーで団体を支える横浜市在住の葛西純選手(49)が意気込みを語った。

蛍光灯、ガラス…デスマッチ特長

 フリーダムズは2009年9月に旗揚げ。選手5人でのスタートで、葛西選手は「吹けば飛ぶような団体で、15年も続くとは夢にも思わなかった」と振り返る。蛍光灯やガラスなどの凶器を使ったデスマッチが特長。葛西選手も試合中の大けがで欠場することもあったが、団体にとって一番の危機はコロナ禍で大会が開けなかったこと。「体は元気なのに、試合ができないのはきつかった」という。

ドキュメント映画で新しいファン

 21年5月、自身のレスラー人生を追ったドキュメンタリー映画「狂猿」が公開された。そこで描かれたヘルニアからの復帰を目指して練習に励む姿がプロレスファン以外からも支持され、試合会場に足を運ぶ人が増えたという。「ピンチをチャンスに変えられた」と新しいファンの開拓につながった。

 1998年にデビューしてから、デスマッチ路線を歩み続ける。「デスマッチをやる天命なのだと思う」と言い切り、間もなく50歳を迎えるが、生涯デスマッチファイターを貫き通す考えだ。

 帯広市出身だが、横浜市に長く住み、団体の拠点は茅ヶ崎市にある。「神奈川県に根差した団体として長く続くようにしたい。15周年はゴールではない。もっと上を目指す」と傷だらけの体で団体を引っ張っていく。

 15周年記念大会は午後3時30分開始。チケット販売中。問い合わせはフリーダムズ【電話】0467・98・0271。

チケットプレゼント

 大会のチケットを5組10人にプレゼント。希望者はメールで本文に〒住所、氏名、年齢、フリーダムズへのメッセージを明記し、件名を「フリーダムズ」として編集室(yoko-d@townnews.co.jp)へ。9月5日(木)着分有効。

 

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御朱印探訪【1】 横浜最古の寺 南区 弘明寺 記者の参拝レポート

 御朱印(ごしゅいん)とは、神社や寺を参拝した証として押印される印章印影のこと。参拝の記録として集める人も少なくない中、タウンニュース記者が横浜市内の寺社で入手できる御朱印を紹介する「御朱印探訪」。第1回目は横浜最古の寺として知られる南区の弘明寺(ぐみょうじ)を訪れた。

本堂の床板も1000年級の歴史

 京急線の弘明寺駅から徒歩2分、市営地下鉄ブルーラインの弘明寺駅からは商店街を通って約5分。弘明寺には2つの門があり、京急側からは楓関門(ふうかんもん)、ブルーライン側からは市指定有形文化財の仁王門(におうもん)が近い。

 御朱印は参拝の証のため、まずは本堂にお参りを。1044年(寛徳元年)に光慧上人が建立、開山したもので、現在の本堂は、1766年(明和3年)に智光上人によって再建されたもの。拝観料500円を納めて中へと進むと、重厚な雰囲気に圧倒されている。すると、通りかかった僧侶と思しき人から、「床も1000年前のものですよ」と声を掛けられた。調べると、光慧上人が建立した際の古材が床板に使われていた。自分の足元にそんな歴史を経たものがあるとは...と若干ひるむ。

国宝の本尊は十一面観音像

 奥へ進むと本尊である十一面観世音菩薩立像が姿を現す。平安時代中期の作で1915(大正4)年に国宝、1950(昭和25)年に国の重要文化財に指定されている。像高181・7cm、ハルニレの1本の木から丸ノミで観音像を彫り出したもので、表面にその彫り痕が見て取れる。

 「一刀三礼で、三日三晩かかったそうです」と教えてくれたのは、弘明寺の執事長、山下

実明(じつみょう)さん。一刀三礼とは、ノミを一回入れる度に三回礼拝したという意味で、737(天平9)年にこの地を訪れた行基が流行していた疫病を鎮めるために彫ったとされる。山下さんによると「観音様の開眼作法から1週間のうちに、疫病が去った」という。

月替わりを含め、御朱印は13種類

 弘明寺で授与される御朱印は全部で13種類。御朱印には御朱印帳に直接書いてもらう「直書き」と、あらかじめ御朱印を書いた状態の和紙を授与される「書き置き」の2パターンがあるが、弘明寺では基本的に書き置きで、唯一、本尊の十一面観音の御朱印が直書きで授与されている。絵柄が月ごとに変更される特別御朱印もあり、季節を感じられる絵は「住職の奥様が描いているんですよ」と山下さん。

 また、弘明寺の場合、本尊以外に大日如来、不動明王、身代わり地蔵などが本堂以外にも点在していて、それぞれの御朱印が用意されている。お参りをしないまま御朱印をいただくことのないよう、境内をゆっくり回る時間を確保しておこう。

パワースポット、七ツ石も必見

 山下さんは「七ツ石はぜひ見ていただきたいですね」と話す。奈良時代、インドから渡来した善無畏(ぜんむい)法師が山の上に紫雲がたなびく様子を見て、「将来、この地に観音が訪れるだろう」と予見し、七つの石で囲んで結界を立て、弘明寺一帯を霊域としたと伝わっている。現在、点在していた石は本堂近くに集められ、自由に見ることができる。

 毎月8が付く日には、病気平癒や心願成就などを願う「本尊十一面観音様ご縁日」を、3が付く日は、縁結びや子宝を願う「大聖歓喜天様ご縁日」が行われ、境内がにぎわう。

■南区弘明寺町267

【電話】045・711・1231

▽参拝時間午前8時から午後5時(境内自由。御朱印授与は午前8時15分から午後4時45分)

▽本堂拝観500円、御朱印授与1枚500円