横須賀・三浦版【9月27日(金)号】
遊休地となっている大矢部弾薬庫跡。奥は県道横須賀葉山線(市提供)

大矢部弾薬庫跡 自然・歴史生かし公園へ 10月から事業者公募

 かつて旧日本軍の弾薬庫として使用され、現在遊休地となっている大矢部弾薬庫跡地(横須賀市大矢部2丁目地内)の活用について、横須賀市は都市公園として整備するため、設計・建設、管理などを行う事業者を10月から公募する。選定を年明けに行い、25年度から設計・整備を開始。27年度以降の供用を目指す。

 市の中央に位置し、東京ドーム4個分に及ぶ約19haの敷地を有す大矢部弾薬庫跡。市は2022年に民間事業者からアイデアを募るマーケットサウンディング(市場)調査を実施するなど、公園用地としての活用に向け準備を進めてきた。

 現在同地は国有地だが、旧軍港市国有財産処理審議会は今年3月、公園供用開始と同時に市に無償譲与することが適当だとする答申を発表した。市は今年度、パブリックコメント(意見公募)を行ったほか、9月の市議会では公園設置に伴う条例の一部改正について審議された。

建設と運営民間事業者

 新公園の名称は「大矢部みどりの公園」。建設と運営には指定管理者制度と市が民間事業者へ発注するDB方式のほか、整備と管理運営を一体として事業者負担で行うPark―PFI制度(公募設置管理制度)を導入する。市担当者は「収益施設の設置など、民間事業者ならではの柔軟な発想に期待したい」と意図を話す。同制度は市内では長井海の手公園ソレイユの丘で導入実績がある。

 現状一般開放されておらず、周囲を宅地に囲まれながらも豊かな自然環境を残している同地。敷地内には鎌倉時代に造営された「深谷やぐら群」や三浦為通(ためみち)を開基とする「円通寺跡」(いずれも埋蔵文化財包蔵地)といった歴史資源もある。

 整備イメージについて、市は基本計画案の中で飲食や滞在ができる施設や広場などを含む「憩い・賑わいエリア」や休憩スペース、子ども向け大型遊具などを設ける「交流・発信エリア」、三浦一族の歴史を伝える「史跡エリア」のほか「囲まれ(非日常)エリア」「斜面地エリア」など5つのゾーニング例を提示。同地が保有する自然・文化資源を生かした都市公園としての生まれ変わりを目指す。

防災拠点として

 市は災害時における防災拠点としての機能も想定している。敷地内に建設される予定の大屋根の休憩施設は、災害発生時に避難所などへ届ける応援物資を保管、配送する拠点として整備する方向だ。

 隣接する大矢部公園については新園供用開始後に廃止し、用地売却を念頭に検討を進めるとしている。

西海岸道路 来年度から用地取得へ 県、2033年度開通目指し

 京急三崎口駅付近から三崎漁港までを結ぶ都市計画道路・西海岸線(延長約5・6Km)の未整備区間約2・5Kmについて、県は9月19日、来年度から用地取得に着手する方針を示した。4年間の取得手続きや埋蔵文化財調査などを経て2033年度の開通を目指すという。地元経済活性化や渋滞解消に向けた長年の課題が具体化することになる。

 同日、県議会本会議で石川巧県議(自民党)の一般質問に答えた。

 同線は県道26号線の三崎ロータリーを起点に国道134号線の三崎口駅付近までを結ぶバイパス道路として、1963年に都市計画決定。三崎漁港〜小網代の南側約3・1Kmは整備を終えているが、小網代〜三崎口の北側約2・5Kmが未整備になっている。

 三方が海に囲まれる三浦市は幹線道路の不足から休日や観光シーズンに主要道路の渋滞が常態化。地元経済団体などから成る市幹線道路整備促進協議会が30年以上にわたり整備を求めていた。

 整備着手は21年6月に黒岩祐治県知事が表明。これを受け、県では今年度、用地測量や道路、小網代湾をまたぐ約600mの橋梁の詳細設計を進めてきた。

 この日、西山俊昭県土整備局長が西海岸線について「三浦半島地域の渋滞緩和を図るとともに観光交通を支え、災害時の代替路としても機能する大変重要な路線」と答弁。「引き続き県は、三浦半島地域の経済活性化や災害時の対応力強化に資する早期整備に向けてしっかりと取り組んでいく」と述べた。

 県横須賀土木事務所によると、今年に入ってからの調査で整備ルートに埋蔵文化財の包蔵を確認。用地取得後の本格的な調査の進捗にもよるが、順調にその後の工事が進んだ想定で2033年度の完成を見込む。

 同線は三崎口駅付近で将来的に三浦縦貫道路と連結する計画だが、縦貫道路の南側約2・5Kmは未整備となっており、県は「事業着手時期は未定」としている。

三崎小学校で20年来、視覚障害に関する出張授業を行っている 抱井(かかい) 康夫さん 三浦市三崎在住 75歳

「こんにちは」の一言で

 ○…「授業をしてくれないか」。盲導犬を連れていたとき通りすがりの教員から不意に請われたのがきっかけだった。以来、三崎小への訪問授業を始めて20年。今では道端で子どもやかつての児童から声がかかる。「こんなに続くとは思わなかったけど交流は宝」と顔をほころばせる。

 ○…「危ない」。車を運転中、助手席の声で急ブレーキをかけるとあわや衝突しそうだった自転車が目の前にあった。赤信号が、視界に入っていなかった。「網膜色素変性症」。30歳のときそう診断された。それまで視覚障害者を認識こそすれ、当事者になるとは夢にも思わなかった。盲学校に入学すると同じ境遇の人がいることを知り、街を歩くと白杖の音にも気が付くように。同時に目が不自由な人にとってこの社会が別世界のように不寛容に感じた。

 ○…「私は『見える世界』にいるんです」。ぽつりとつぶやいた。横断歩道の音響ボタンは騒音になるからと夜間は消され、市役所にすら視覚障害者用の誘導ボタンが整備されない。”見える世界”はつまり、健常者のための社会と同義だ。人生の途中で視力を失ったから一層如実に感じるのかもしれない。障害者にやさしいまちづくりにバリアフリー、言葉だけの配慮が空虚に映った。

 ○…共に暮らす盲導犬「ウーゴ号」は3代目のパートナー。「今生活できているのはこいつのおかげ」と感謝が口をつく。健常者と障害者の乖離を埋めるには―。その解を導くのは容易ではないかもしれない。ただ、できることはある。「まずはあいさつでいい。声をかけてみて」。そこに誰かいても自分には気が付くことができない。でも、会話を交わせば交流が生まれる。きっかけはそんな小さな一歩から生まれると信じている。

ザルや発泡スチロールを素材にした作品

「SENSE ISLAND」関連企画 不用品でアート作品 参加型ワークショップ

 今秋の開催が発表された無人島・猿島と横須賀市街地を舞台とする一大アートイベント「SENSE ISLAND/LAND│感覚の島と感覚の地 2024」(10月26日(土)─12月15日(日))の前哨企画として10月10日(木)、参加アーティストのチェ・ジョンファ氏と一緒に捨てられてしまう身近な不用品を素材にしてアート作品をつくるワークショップを開く。横須賀市ほかの主催。

 チェ氏は平昌五輪のアートディレクターを務めた韓国を代表するアーティスト。今回の市民参画プロジェクトのタイトルは、おいしくなーれ「Oishikuna-re」。完成した作品は同企画展の期間中、会場で展示される。

 ワークショップの会場は横須賀中央駅付近を予定(決定後参加者に連絡)。時間は午後2時から7時(出入り自由)で参加無料。年齢制限なし。希望者は家庭の不用品を持参して制作・見学する。申し込みは左記の2次元コードから。

 

実力派の話芸 衣笠で慈善寄席

 名うての噺家が話芸を披露する「衣笠ちゃりてぃー寄席」が10月17日(木)、横須賀市はまゆう会館で開かれる。衣笠商店街の主催。瀧川鯉昇さんや、弟子で横須賀出身の瀧川鯉丸さんらが高座に上がる。

 午後2時開演。チケットは2500円(全席自由)。売り上げの一部を能登半島地震被災地への義援金として寄付する。問合せは同商店街【電話】046・851・2310。

湘南衣笠ゴルフ キッチンカーが大集合

 湘南衣笠ゴルフ(横須賀市大矢部1の3の6)は10月6日(日)、キッチンカーグルメイベントを開く。炒飯、タコライス、生パスタ、チュロス、マフィンなど味自慢の9台が出店する。メダカすくい、マヤ暦タロット占い、鍼灸体験のコーナーなどもある。時間は午前11時から午後4時。

 詳細は湘南衣笠ゴルフ【電話】046・836・0378。

避難経路を指さして確認する子どもら

消防士らの視点に学ぶ 浦賀小で「防災フェスタ」

 災害や火災時に備え、親子で自らを守る術を身に付けてもらおうと浦賀小学校(岩澤進校長)で9月21日、初の防災フェスタが開かれた。同小PTAが主催。現役消防士らが講師役を務め、同小児童や近隣住民らが防災への意識を高めた。

 「今ここで家事が起きたらどこに逃げますか」。一般社団法人火災予防のONE LOVE代表理事で現役消防士の渡邉航生さんの問い掛けに子どもたちが避難誘導灯のついた扉を指さした。

 イベントは市職員で一般社団法人KAKEHASHI代表理事でもあるPTA会長の高橋正和さん(41)が発案。今春、台湾で大規模地震発生直後に避難所が即座に開設された報道を見て、「災害時に公助をただ待つのではなく、自分や大切な人を守るために自助の意識を高めてほしい」と全国の現役消防士らが組織する団体や市消防局の協力で開催にこぎ着けた。

 講座では渡邉さんが「花火の最中、服に火が付いたら走らず転げ回って」と指南。日頃できる火災予防では「(火元にならないよう)掃除する、逃げる、早く消す」などの心構えを説いた。会場では起震車による地震体験や救命教育、スタンプラリーなども行われ、参加者は思い思いに取り組んだ。

 同小1年生の大久保成桜(なお)さん(7)は「マンションに住んでいるので、火事のときはベランダから逃げられるようにしたい」と話した。

小麦粉を炒ってカレーのベースをつくる

「元祖海軍カレー」どんな味 明治期のレシピで再現

 横須賀のご当地グルメとして知られる「よこすか海軍カレー」を明治期のレシピで再現を試みる料理教室が9月21日、横須賀市生涯学習センターで開かれた。カレーを通じたコミュニケーションの場づくりに取り組む「横須賀みんなのカレー食堂」の村尾直人代表が講師を務めた。

 海軍カレーは、1999年に海上自衛隊、横須賀市、横須賀商工会議所の3者で行った「カレーの街宣言」から始まった食による町おこし。1908(明治41)年に発行された「海軍割烹術参考書」に軍隊食として紹介されたカレーライスを起源としている。市内の海軍カレー認定店では、当時の基本レシピに独自のアレンジを加えて提供しているが、今回の教室では使用する具材と手順を忠実に守った。ポイントは、「牛脂と小麦粉をフライパンで炒ってイギリス製のカレー粉を加えて仕上げるルウ」と村尾さん。元祖海軍カレーの本来の味を伝えたいと話していた。

商品開発の実践トレーニングとして参加した学生サークルのメンバー

魚市場と県大生コラボ 「ご飯が進む」ふりかけ3種 さかな祭りで販売 

 横須賀魚市場(横須賀市平成町3の5の1)と 近くにある神奈川県立保健福祉大学の食育サークル「シーラボ☆」が連携して、地場の水産物を用いたふりかけを開発した。イワシや海苔を使った加工品を製造する際に発生する端材を有効活用したもので、食品ロスの削減につなげる狙い。10月6日(日)に開かれる「よこすかさかな祭り」で初売りを行う。当日は、地元企業のむらせダイニングとも連携。同社のおにぎり販売に合わせて、米の味を引き立てるふりかけを試食してもらう。

 魚市場と学生のコラボ商品開発は昨年に続き2例目。前回は地場のタコとサザエのオイル煮を瓶詰にして販売。タコとサザエに含まれるタウリンが血圧やコレステロールを低下させる健康効果に着目した商品だった。

 今回は「万人が食べやすい」をテーマに、魚食の普及にもつながる商品を考案。魚市場の職員と学生らが試行錯誤しながら「カレー」「うめ」「チーズ」の3種のふりかけを完成させた。パッケージには開発に参加したサークルメンバー12人の写真が添えられている。価格は1袋350円、3袋セットで1000円。

バケツリレーで地域連携を体験

避難所を模擬体験 岩戸地区で防災キャンプ

 地震発生を想定して避難所を開設し、運営方法などを学んで備える1泊2日の防災キャンプが9月20日・21日、岩戸地区の震災避難所に指定されている岩戸中学校で行われた。岩戸地区避難所運営委員会の主催。地域の小・中学生と保護者ら約100人が参加した。

 避難所を模擬体験することで、災害時の行動や集団での過ごし方、必要となる備品を確認する狙い。宿泊場所となる体育館の床の硬さや他者との距離なども体感することで、避難所生活をリアルにイメージしてもらう。

 備蓄倉庫にある大鍋を持ち出し、バケツリレーで水を溜める訓練も実施。ガスの火で湯を沸かして保存食を温める作業も経験した。企画を主導した長島正志さんは「『今何をすべきか』といった主体的な行動の必要性を感じてほしい」と生徒らに呼び掛けた。

 同中学校1年生の野崎秀明さんは「災害時に家族を助けるための知識を得たいと考えて参加した。地震におびえないよう、行動することを心がけたい」と話した。

三崎口駅前 地元名産の土産物店 観光バス案内所跡地に

 三崎口駅前に設置されていた京急オープントップバス案内所が三浦海岸駅に移転したことに伴い、京急グループの三崎観光株式会社は、跡地に三浦半島の特産品を販売する土産物店「三浦三崎ストア」=写真=を9月14日にオープンした。

 三崎港や城ヶ島への観光の入り口として利用客の多い同駅。観光客などに向け、地元特産品の販売を通して地域の情報発信を行っていく。

 農家から直接仕入れた三浦野菜や水産加工品、地元アーティストが作成したアクセサリーなどが並ぶほか、週替わりでキッチンカーの出店もある。

 営業は土日祝日の午後1時から6時。

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経口補水液を自作する児童ら

初声市民センター 作って食べて考える 児童ら非常食試作

 三浦市の初声市民センターで9月21日、非常食の試作や試食を通して災害時に備える取り組みが行われた。同センターで毎月子ども食堂を開催している「みうらっこ食堂」の活動の一環。初声小学校の児童や保護者など約20人が取り組んだ。

 9月の防災月間に合わせ、食堂を運営する実行委員会が企画。この日はグループごとに分かれ、袋のまま熱湯調理ができるラップでケチャップライスや焼きそば、蒸しパンを調理。レモン汁と塩、砂糖を使った経口補水液も自作した。

 試食で蒸しパンをほおばった初声小4年生の女の子は「ふわふわで美味しい」と笑顔を見せた。

 会場には防災にまつわる絵本や災害用トイレ、防災グッズなども展示され、実行委副代表の長瀬初美さん(55)は「災害を怖いものと敬遠するのではなく、子どもたちにもいざというときに出来ることを考えてもらうきっかけにしてほしい」と話した。
「オレはDJ、アニキ俳優-」。ステージで熱唱したRUEEDさん(手前)

レゲエ祭 熱狂の三笠公園  2日間で4・2万人来場

 ジャマイカ発祥の音楽「レゲエ」の突風が吹き荒れた―。

 国内レゲエシーンの第一線で活躍するアーティストらを招聘して開催された音楽イベント「Yokosuka Reggae Bash 2024」が9月22・23日に三笠公園(横須賀市稲岡町)で開かれ、約4・2万人の来場者を集めた。発起人でレゲエDJのRUEEDさんは、ステージから「レゲエバッシュは未来への種まき。次世代が音楽に触れる場であり、音楽で横須賀を盛り上げていく」とメッセージを放った。兄で俳優の窪塚洋介さんを呼び込み競演する場面もあった。

 昨年の好評を受けてイベントはスケールアップ。横須賀中央周辺の飲食店と連携したグルメキャンペーンも展開し、市内外からの来訪客を迎えた。

諸磯公園周辺散策 作物と雑草 戦い観察

 三浦半島の広大な野菜畑に侵入する数々の草花、俗にいう雑草と作物の戦いぶりを観察するユニークな視点の散策イベントが10月8日(火)、三浦市三崎町の諸磯公園周辺をコース(約1・5Km)に開かれる。

 秋の植物ウォッチングを楽しみながら作物の中に侵入する野菜としない野菜を確認。「実りの秋」以前の果実の様子も観察する。本紙連載「三浦半島 草花歳時記」の著者で日本自然保護協会 自然観察指導員の金子昇さんがガイドを務める。

 午前9時40分に「栄町」バス停集合、11時40分頃諸磯白須で解散。定員15人で参加費200円。10月5日(土)締切り。

 申し込みは金子さん【携帯電話】080・3028・9196。

三浦市初声町の福泉寺 「みんなでお寺ごはん」

 地域の子どもたちに読み書きを教える昔ながらの「寺子屋」を開設している三浦市の福泉寺(初声町三戸1020)は9月29日(日)、集まった人らにおにぎりを提供する「みんなでお寺ごはん」のイベントを開催する。

 同寺では2021年11月から地域コミュニティの場づくりとして寺子屋をスタート。毎週月曜日の午後を活動日に当て、地域の子どもたちが勉強や宿題に励んでいるほか、外遊びやゲームなどをして過ごしている。

 今回は多世代が集い、食事のありがたさや大切さを感じてもらうことが狙い。同寺の近くにある飲食店「Gyoki,sおにぎり処」が協力して、かまど羽窯炊きの米を使用した無添加おにぎりを用意する。

 午前11時受付開始。参加費として1人100円以上のお布施を渡すとおにぎり(2個)の引換券が先着100人にもらえる。和太鼓の演奏やじゃんけんゲームなども楽しめる。詳細は同寺【電話】046・888・1959

植え付け体験を行う参加者らと地下茎を紙粘土で覆ったコアマモ(右)

よこすか海の市民会議 海に「森」を作ろう アイクル裏でアマモ植付け

 「魚類、貝類に植物、様々な生態系が集う『森』を海に取り戻そう」――。海の再生活動に取り組むよこすか海の市民会議(=川口将人代表)と横須賀市は9月16日、脱炭素の取り組みの一環としてアマモの植え付け体験会を浦郷町のアイクルで実施した。小中高生やその保護者ら約20人が参加し、同施設裏にある造成浅場で約1時間作業を行った。

 水中で窒素やリンを吸収し赤潮を防ぐほか、海の生物が産卵し、稚魚が身を守る役目を果たすことから「海のゆりかご」と呼ばれるアマモ。近年は海草を食べる魚・ウニの増加や海水温の上昇などによる「磯焼け」で、その数を全国的に減らしている。

 体験会ではあらかじめ15cm程度に育てたコアマモが用意され、参加者らは地下茎部分を紙粘土で覆い沿岸で植え付けを行った。体験後は、同団体が採取したアミメハギ、サザエ、ヨウジウオなど近海に生息する魚貝類を集めた「ミニ水族館」を鑑賞した。

一昨年の成果続々

 同様の取り組みは2022年7月以来2回目。川口さんは「前回植えたものは順調に育っており、周囲に群落を形成するまでになった」と手応えを感じている。

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ポウハタン号の模型(東善寺蔵)

OGURIをあるく 〜小栗上野介をめぐる旅〜第18回 アメリカ編【2】文・写真 藤野浩章

 1858年に結ばれた日米修好通商条約。実質的に鎖国政策が終了となるこの条約が結ばれるまでには、数々の困難があった。

 なかでも、朝廷の反発は想像以上に激しかった。何としてもアメリカとの戦争を避けたい大老・井伊直弼(いいなおすけ)は天皇の裁可(勅許(ちょっきょ))を得ることなく調印する、という大胆な手段を選ぶが、これが後に大混乱をもたらし、結果として幕府は崩壊へと向かうことになる。

 そんな中、批准(ひじゅん)書の交換のために選ばれた3人は、正使に外国奉行・新見正興(しんみまさおき)、副使に村垣範正(むらがきのりまさ)、そして「目付(めつけ)」として任命されたのが小栗忠順(ただまさ)。実は当初、使節は別の3名だったが、政治の混乱で全員が失脚し、いわば"予備員"が選ばれた。

 新見は上品な美男子だったという。東善寺・村上泰賢(たいけん)さんによれば「かつての遣隋(けんずい)使に選ばれた小野妹子(おののいもこ)以来、日本の使節はまず風采(ふうさい)で選ばれる傾向があった」というから面白い。同じく村垣は「文筆にたけていて、保守派で年齢や経験からも、うかつにアメリカ人に言いくるめられることはない」、そして小栗はというと「直言する態度や切れ者の才能が井伊大老の目にとまり」抜擢されたという。イケメンスターと"ノーと言える"脇役という万全の布陣で、アメリカと向き合うことになったというわけだ。

 総勢77名の使節一行は、迎えに来た駆逐艦ポウハタン号に乗り込み、1860年1月18日、川崎沖を出発する。

 この時、護衛目的で浦賀から出港したのが咸臨(かんりん)丸。オランダ製で約三百トンのこの船に乗っていた日本人は96名。その指揮役が、勝海舟(かつかいしゅう)だった。