横須賀・三浦版【12月6日(金)号】

不登校 横須賀で過去最多 子どもの「困りごと」 どう支援

 横須賀市立小中学校で、昨年度の不登校児童生徒数が1278人で過去最多となったことが分かった。教育を取り巻く環境が複雑化する中、子どもが困りごとを相談できる体制の確保と保護者への支援も求められている。

 結果は神奈川県が実施した23年度「児童・生徒の問題行動・不登校等調査」から、同市教委が市内の状況をまとめ先月発表したもの。23年度の不登校児童生徒は前年度に比べ203人増加し、過去5年で最大の増え幅となった。全体の児童生徒に占める割合は5・16%。全国の3・8%、神奈川県の3・76%と比べても割合が大きい。三浦市でも不登校は増加傾向で、特に小学生では前年比で2倍以上増加しているという。

 増加の要因としては、一般的にコロナ禍以降の学校活動の減少や、他者との関わりが希薄になった社会変化などが挙げられる。横須賀市支援教育課の原口尚延課長は「学校に行けない・行きたくない理由が自分でも分からない子も多い」と話す。「学校に行くこと自体がゴールではないが、子どもの『困り感』が数字に表れているのは事実。それらを一つ一つケアする体制が重要だ」としている。

学校内外に支援体制

 市教委は中学校全校と一部小学校に別室登校ができる相談室のほか、それぞれのペースで学習等ができる「教育相談教室」を市内5カ所に設置。スクールカウンセラーも各校に配置しているが、訪問日や時間が限られているのが課題だ。

 三浦市でも不登校や教育の相談を受け付ける「教育相談室」や「相談指導教室」を設けている。

「特例校も選択肢」

 不登校・引きこもりに悩む若者の支援を行うNPO法人アンガージュマン・よこすかの島田徳隆理事長は、横須賀市の不登校支援について「先進的」と評価しつつ、今回の結果を受け「上手く機能していない可能性も」と顔を曇らせる。既存の学校に通うのは難しい子もいる中、現在大和市などで運営されている不登校の子を対象とした「学びの多様化学校」の設立も「一つの手段なのでは」と話した。

「保護者ケアも」

 不登校に悩むのは当事者の保護者も同様だ。不登校の子を持つ小林怜奈さん(池田町)は「我が子が学校に行けない責任を自分に強く押し付けていた」と過去を振り返る。同じ境遇を持つ親同士の交流で立ち直ったことから、「必要な時に駆け込める『親の居場所』も必要」と保護者へのケアの重要性を説いた。

開発が予定される浦賀ドック周辺

浦賀駅前周辺地区活性化事業 パートナー事業者を公募 15ha活用 集客・交流拠点に

 かつて日本の造船業を支えた住友重機械工業旧浦賀工場(通称・浦賀ドック)周辺の利活用を巡り、横須賀市は11月29日、駅前周辺地区活性化事業のパートナー事業者を公募すると発表した。今後優先交渉権者を来年7月頃までに決定し、市と住友重機工業、パートナー事業者の3者間の協定や規制緩和などの手続きを経て、2027年度以降の着工を目指す。

 浦賀ドックは、国内屈指の造船所として2003年の閉鎖まで約1千隻の艦船の製造・修理を行ってきた国内最古級の大型ドライドック。21年3月、ドックを含む2・8haを同社が市へ無償で寄付。これを受け、市が近代歴史遺産を活用した観光、交流拠点の形成に向け検討を重ねていた。

 同年市は活用案や事業手法を探る調査を実施したものの、規模が足りず開発に参画する企業は現れなかった。こうした経緯を踏まえ、今年3月には両者が周辺地区の活性化に向け、土地活用に関する協定を締結。同社所有の12・2haを含む計15haを一体的に利活用することが可能になった。

 掲げる事業コンセプトは「新しい都市拠点の形成による『第二の開国』の実現」。ペリー来航以降、日本が世界に開かれるきっかけになった「第一の開国」の役割を踏まえ、海洋都市としての特徴や資源を生かしつつ、新たな価値の創出や地域の内外から人が集う場作りを目指す。具体的なイメージとして、ウォーターフロント施設やマリンレジャー施設、歴史資源を活用した集客施設、宿泊施設や商業・飲食施設などを挙げた。

 市民官連携推進担当は「エリア周辺を巻き込む賑わいの波及効果を期待している。文化財的にも貴重なものが残っており、まちを共に育てていける事業者に参画してもらいたい」と話した。

大学自動車部の日本一を決めるモータースポーツ「フォーミュラジムカーナ」の女子クラスで優勝した 吉川 萌衣(めい)さん 横須賀市池上在住 23歳

ゼロコンマの世界、その先へ

 ○…勝利の女神が微笑んだ。基準タイムは1分30秒。前日、1分間全力走行したポイントを目安に定め、残りの秒数を声に出しながらハンドルを握った。この作戦が奏功し、誤差ゼロコンマ2秒という他の追随を許さない圧倒的な記録で初代王者に輝いた。「優勝できてほっとした。負けられない戦いだったから」。レースを振り返ると意志の強さが瞳に光った。

 ○…「このルールは何だろう。なぜ努力が報われないの」。法政大学2年生の時に出場した大会結果に疑問を抱いた。予選会6位の結果は決勝進出の資格を満たしていたはずだったが、「女子1大学2人」の要件が足りず涙を飲んだ。フォーミュラジムカーナも昨年の発足時は男女混合形式。「モータースポーツは男女差がないと思われがち。でも、そうじゃない」。反射神経や体躯による車体の安定、ゼロコンマを競う世界だからこそ、身体能力の差が顕著になる。なのに―。真摯に向き合ってきたからこその不満を運営側にぶつけ直談判。女子クラス新設のきっかけを作った。

 ○…体操やバレー、卓球、女子サッカーなどさまざまなスポーツを経験してきた。旺盛な好奇心の一方、取り組むことには手が抜けないたちで、生粋の負けず嫌い。大学でサークル活動ではなく、名門自動車部の門を叩いたのも「やるからにはちゃんとやりたい」との気概故だ。

 ○…「2回の走行に”全集中”して自己ベストを尽くすこと」。競技の魅力を問われ、そう返した。次なる目標は全日本ジムカーナの日本一。卒業後は自動車の電装品関係のメーカーに就職が決まっているが、レースは今後も続けていく。その先の目標もある。「女子を含めて競技人口を増やしたい。業界全体を盛り上げていけたら」

三崎漁港用地の活用考える 11日、うらりで団体設立総会

 三崎漁港の新たな海業振興を目指し市が取り組む用地利活用プロジェクトを巡り、あり方を市民目線で考える団体の設立総会が12月11日(水)、うらりマルシェ2階の市民ホールで開かれる。

 「新海業プロジェクト」と銘打った事業。うらりや三崎まぐろ加工センターがある計3haが対象で、市が5月に優先権者を興和グループ(本社・名古屋市)に選定した。老朽化したうらりの大規模改修を含め、民間が費用負担する前提で、市は来年3月に同社との基本協定締結を目指している。

 ただ、現状では同グループの提案内容は公表されておらず、計画の全容は見通せていない。こうした背景から活用のあり方を市民や事業者目線で考えようと団体を発足させることにした。

 当日は午後3時から同プロジェクトについて語り合う会を実施。4時10分から団体の設立総会を行う。いずれも一般参加可能。

展示初日の会場の様子

横須賀市自然・人文博物館 街並みの変遷辿る 特別展示が開始

 横須賀市内の市街地の移り変わりをテーマにした特別展示「市街地が語る横須賀〜中央・追浜の先駆性と変貌〜」が、市自然・人文博物館で開かれている。期間は来年5月21日(水)まで。

 同展では、横須賀製鉄所の建設から始まる近代化、震災復興、戦後の開発事業、現代の再開発まで、街並みの変化を写真や地図、資料などから辿ることができる。同館や市郷土資料室が保有する大正時代の地図や埋め立て断面図など、普段は見ることが出来ない資料も掲出されている。

 関東学院大学や昭和館の協力により、当時の様子を再現した模型や映像も展示。昭和の懐かしい街並みをジオラマで体感できるコーナーも設けられている。

 同館担当者は「毎日変わらないと思う風景も実は少しずつ変化を見せている。再開発に際し、現在と過去の街の姿を今一度思い返してくれたら」と展示の意図を話した。

 1月25日(土)と3月23日(日)には担当学芸員による展示解説も実施する。いずれも午後1時30分から1時間。申込不要で無料。問い合わせは同館【電話】046・824・3688。

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大地を分ける武山断層 調査会が一般公開講座

 横須賀市や三浦市に分布する活断層を研究する市民団体「三浦半島活断層調査会」が12月21日(土)、創立30周年を記念した一般公開講座を開く。テーマは「大地を分ける『武山断層!』」。「活断層を自分の目で確かめて」と参加を呼び掛けている。

 午前9時30分に京急長沢駅に集合。下浦地震断層〜荘厳禅寺〜津久井小学校〜八幡神社〜須軽谷を巡り、武山中学校で解散する。参加費500円。17日(火)まで申し込みを受け付ける。問い合わせは同会田上さん【電話】0467・24・2469。

息の合った歌声を披露する合唱団の児童ら(横須賀芸術劇場提供)

コースカに聖夜の歌声 少年少女合唱団がミニ演奏会

 横須賀を拠点に活動する横須賀芸術劇場少年少女合唱団が12月1日、本町の商業施設「コースカベイサイドストアーズ」でミニ公演を行った。同8日(日)に開くウインターコンサートのPRを兼ねたもので、約40人の小学生メンバーが息の合った歌声を響かせた。

 週末の昼下がり、商業施設の一角がクリスマスムードに包まれた。この日、参加者らは「きらきら星」「赤鼻のトナカイ」「きよしこの夜」などを披露。透明感ある歌に買い物客らが足を止め、耳を傾けていた。

 冬公演は横須賀市文化会館大ホールで午後3時開演。大人のメンバーから成る横須賀芸術劇場合唱団との合同公演で、総勢250人がクリスマスの名曲や「歓喜の歌」を披露する。チケット大人2千円ほか。また少年少女合唱団では新団員を募集している。問い合わせは同劇場【電話】046・823・9999。

情報公開手数料70万円→910円に 市民団体提訴 市が条例改正へ

 横須賀市は11月26日、情報公開請求にかかる手数料を、データ容量に基づく算定からファイル数に応じた算定に変更する条例改正案を12月市議会定例会に提出すると発表した。今夏、市民団体が音声データを情報公開請求したところ約70万円の費用がかかるとの説明を受け、「知る権利の実質的な侵害にあたる」として市を提訴していた。

 現行の市情報公開制度は、CD-R1枚150円と100キロバイトごとに200円の納付を求めている。改正案はCD-R1枚70円、DVD-R1枚100円と1ファイルごとに210円に変更し、今年9月1日にさかのぼって適用する。市によるとデータ容量に基づく算定基準を設けているのは県内では横須賀市のみ。改正後、同じ請求をした場合、910円になるという。

 市は制度を導入した2008年以来、見直しを行ってこなかったといい、訴訟を契機に国や横浜市の例などを参考に改定に着手した。

 市を提訴したかながわ市民オンブズマンによると、今年9月、教科書採択に関する教育委員会の会議音声データ(6時間分)を請求したところ市側から70万4450円が必要との説明を受けた。高額な手数料負担を問題視し、10月に横浜地裁に訴えを起こしていた。

 同オンブズマン事務局の小沢弘子弁護士は、市の対応について「対応の遅さはあるが、改正自体は歓迎したい」とコメント。今後の裁判については「訴えの利益はなくなるが、現時点では手続きが進んでおらず方針は答えられない」とした。

地域公共交通、見直す機に デスク・レポート

 ▼自家用車を使って有償で乗客を運ぶ「神奈川版ライドシェア(かなライド@みうら)」が12月17日から本格導入されることが決まった。三浦市はタクシー事業者主体による導入を目指していたが、採算面で難色を示され実証実験と同様の枠組みが継続された形だ。ライドシェアは夜間のタクシー不足を補う一方、財政負担や運転手の担い手確保など課題は残る。

 ▼神奈川県によると4月から始まった実証実験では11月までの利用実績は208日間で計767回に達した。1日平均3・7回で、当初目標の5回を下回ったものの一定のニーズが確認できたと言えよう。アプリ配車のマッチング率もライドシェア導入前の前年と比べて約20ポイント改善した。現在まで事故やトラブルの報告はなく、キャッシュレス決済を採用することで料金に関するトラブルの未然防止も奏功した形だ。

 ▼ただ、事業の持続性については懸念も残る。実証実験では、タクシー会社がドライバーと雇用契約を結ぶ形では採算が確保できないことが浮き彫りになった。市と県は事業者とドライバーの業務委託契約を認めるよう国に求めたが、受け入れられなかった。実証実験を踏まえた試算で、不足分と見込まれる年間約120万円は市が負担することになる。利用者拡大へ、今後周知の強化が欠かせない。また運転手確保も課題だ。過去の調査でドライバーは、稼ぎよりもまちの利便性向上に役立てばと慈善精神で参加する人が多いことが分かった。本格導入後は14人から10人に減るといい、人手不足が常態化すれば事業の根本が揺らぎかねない。

 ▼大切なのは、公共交通のあり方そのものの議論を深めることだ。人口減と高齢化が進むまちで住民の足をどう確保するか。マイカーが主体のまちで高齢化が進めば免許返納が増え、公共交通への依存度は高まる。バスの運行の改善や乗合タクシーといった工夫も欠かせまい。ライドシェア導入を地域公共交通のあり方を見直す機としたい。

上宮田長島さん 門外漢が記した郷土の記録

 三浦市南下浦町上宮田在住の長島文夫さん(89)=写真=が先ごろ、住んでいるまちの出来事などを書き記した『上宮田のもろもろの記録4』を発行した。1991年の初版からライフワークとして30年以上にわたり手掛けてきた三浦海岸シリーズの17作目。

 長島さんは47歳で心筋梗塞を発症して勤務先を退職。その後、リハビリとして行っていた散歩をきっかけに郷土の歴史に興味を持つようになったという。足が不自由で広範囲の取材が難しいため、「三浦海岸(上宮田)を中心とした域内の出来事とそこに暮らす住民に影響するであろう事に絞って記録してきた」と話す長島さん。私見を一切挟まずに事実だけを伝える年表形式だが、過去の発行物を含めて蓄積してきた情報から三浦の来し方や自治体としての趨勢を俯瞰的に捉えることができる。頒価2千円。三浦市内の図書館などに寄贈している。

 問い合わせはタウンニュース社 横須賀支社【電話】046・850・1290。

舞台劇「あん」 8日、文化会館

 横須賀演劇鑑賞会主催の舞台劇「あん」が12月10日(火)、横須賀市文化会館で上演される。

 どら焼き店で働く元ハンセン病患者の老年女性が主人公。偏見と向き合う姿を通じ、人生の意味を問い掛ける。劇団朋友が演じる。

 午後6時開演。鑑賞には同会への入会が必要。入会金2千円、月会費2800円。

 問い合わせは大溝さん【携帯電話】090・1667・0688。

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ビニールシートを加工する関東学院中学校の生徒ら

気分は防水職人 富士防で中学生ら職業体験

 横須賀市森崎に本社を構える(株)富士防で11月14日、中学生らを招いた職業体験が行われた。関東学院中学校(横浜市南区)の1年生20人が長期的に建物を保護するために欠かせない防水の技術の一端を学んだ。

 同社は首都圏を中心にマンションや公共施設の大規模修繕を手掛ける。1989年の創業時は防水工事専業で、現在も多くの自社職人を抱える。

 この日、生徒らは同社が注力するSDGsの取り組みや建物の大規模修繕について講義を受けた後、防水加工を体験。同社技術部社員の指導の下、ベランダや屋上を漏水から守る塩化ビニールシートに溶剤を塗りながら丁寧に貼り合わせた。参加生徒の一人は「家を長持ちさせるために防水の技術が必要だと知った。作業も面白かった」と振り返った。同社の岡田圭太常務は「防水は生活の身近にある技術。仕事に対する理解を深めてもらえれば」と話した。

中学生記者がまちを行く タウンニュース社で職場体験

 タウンニュース社横須賀支社は11月13・14日に大楠中、20・21日に野比中の生徒の職場体験を受け入れた。生徒は各所を訪ね記者の仕事を体験した。

赤星直忠の足跡を知る

 大楠中2年の谷本善さん、岩見陽太朗さん、平間龍志さんの3人は建設業を手掛ける宇内建設(株)にある「赤星直忠博士文化財資料館」で同社の宇内正城代表へ取材した=写真左。

 同資料館は三浦半島を中心に、遺跡調査や考古学研究を行っていた故・赤星直忠博士が採集した縄文から中世頃までの文化財遺物などを展示している。「赤星博士と宇内代表の関係は」などの質問を宇内代表に投げかけ、実際に記事にする体験も実施。「人に読まれる文章を書く難しさを学んだ」と口を揃えた。

「優良給食」の秘密探る

 野比中の小池華乃さんと小島柚紗さんは、神奈川県の「学校給食優良学校」に選出された岩戸支援学校への取材に挑戦した=同右。受賞の主な要因は栄養教諭の服部和美さんを中心とした食育推進だ。一昨年の厨房新設で完全自校給食化。「昼食にも学びを」という理念のもと、地場産食材の使用や能登半島地震で被災した北陸の郷土料理の提供などに取り組む。

 生徒らは「栄養士の思いは生徒にこそ知ってほしい」「この学校では毎日の給食が楽しみになりそう」と満足した様子を見せた。

日産追浜工場内GRANDRIVEを疾走する選手ら

日産追浜工場で記録会 車いすで青空の下快走

 自動車の試験コースを車いすで走行する記録会「日産カップ追浜チャンピオンシップ2024」が12月1日、日産自動車追浜工場内のGRANDRIVEで開かれ、8歳から67歳の選手ら55人が出場した。

 舞台は同社で生産した車両の試験走行を行うコース。1周3・75Kmで荒れた路面や高速道路の段差などを再現した部分もある。記録会は競技用車いすによる5Kmの部と10Kmの部、日常用車いすで出場できる2・5Kmの部の3部門で行われた。

 車いす陸上の入口にもなる同記録会。パリパラリンピックの男子マラソンで銅メダルを獲得した鈴木朋樹選手(30)も、10歳で初めて同記録会に参加している。大会事務局長は「誰でも気軽に参加できる記録会。パラ競技に興味を持つきっかけになったら」と話した。

健常者も出場

 同記録会は普段車いすを使用しない健常者も出場できる。長沢在住の小林誠さん(52)は足が不自由な息子の付き添いで9年前から参加。回を重ねるごとに競技に熱中し、今年は単独で2・5Kmの部に出場した。

 実際に車いすに乗ることで、路上の段差や傾斜といった「健常者には見えづらい障壁に敏感になった」と小林さん。「共生社会に向けた取り組みとしても、健常者も参加できる記録会が増えたら」と話した。

介助を受けて記録測定する参加者

障害関わらず水泳満喫 北体育館で初の記録会

 障害の有無に関わらず誰もが水泳を楽しめる環境づくりとパラスポーツの推進を目的とした「インクルーシブ水泳記録会」が11月30日、夏島町の横須賀市北体育館で初めて行われた。市内で水中療育やパラアスリート支援を手掛けるNPO法人FunPlace39とシティサポートよこすかの共催。

 肢体不自由者や視覚障害者、知的障害者、水泳愛好者など約150人が参加。平泳ぎや背泳ぎ、自由形などの記録を測定した。それぞれが持つ障害の度合いによって、ビート板を使用したり、介助者のサポートを受けながら完泳する場面もあった。

 同法人の宮浦めぐみ代表は「パラスポーツへの興味や関心を持ってもらう機会になれば。共生社会の実現に向けて来年以降の開催も視野に入れている」と話している。

健康づくり専門家指南 8日、三浦市立病院

 日頃の健康づくりについて、身体機能検査や専門家の相談が無料で受けられる「みうら市民健康大学オープンキャンパス」が12月8日(日)、三浦市立病院で開かれる。午前10時から午後3時。

 心身の衰えを調べる「フレイルチェック」(20人限定)や、血圧や血糖値、血管年齢などの健康チェック、最先端機器を使った歩行測定、医師や管理栄養士らによる相談ブースなど多彩な内容。ボッチャ体験や普段は入れない手術室や地下の免震構造を見学する「病院ツアー」もある。

 三崎口駅、風の珈琲、三浦市役所間の送迎ワゴン車の巡回あり。問い合わせは同院リハビリテーション科藤井さん【電話】046・882・2111。

海洋保全を推進するために出来ることを書き出す参加者

県主催でブルーカーボン会議 海の未来を考える 高校生や企業50人が意見交換

 神奈川県民や企業、行政などが集まり、三浦半島地域の海の現状や未来について語り合う「ブルーカーボンUpdate meeting」が12月2日、横須賀市日の出町のヴェルクよこすかで開かれた。県が横須賀や三浦市などの三浦半島4市1町と連携して行っているブルーカーボン推進事業の一環で、約50人が参加した。

 講演会では、葉山町にある葉山水域環境実験場で、沿岸生態系の保全に取り組む山木克則氏が登壇。二酸化炭素吸収源となる藻場が減少する「磯焼け」が三浦半島沿岸でも深刻化している点やカジメ・アラメといった大型褐藻類の陸上培養で、藻場の再生が進む葉山の海の事例などを紹介した。

 第2部で行われた4人1組のグループワークでは、参加者らが講演を聞いて疑問に感じたことや豊かな海を保全するために自分たちに何ができるのかなどを付箋に書き出して共有。二酸化炭素削減に向けて「まずは節電や節水から」といった声が挙がったほか、課外授業で参加した湘南学院高校1年の生徒からは「藻類の養殖の機械化が進めば効率的に藻場を増やせるのではないか」などのユニークな意見も飛び出した。

渋沢研究がライフワークの平松氏

時代が求める「渋沢型資本主義」 開国史研究会の講演で平松氏

 新1万円札の肖像となった渋沢栄一を知る講演会が11月30日、横須賀開国史研究会の主催で開かれた。講師を務めたのは、渋沢の功績や思想を後世に伝える活動を精力的に行っているかながわ信用金庫会長の平松廣司氏。会場のヨコスカ・ベイサイド・ポケットに集まった約180人の聴衆が熱心に耳を傾けた。

 渋沢は日本初の銀行である「第一国立銀行」をはじめ、500余の企業の設立に関わったことから「近代日本経済の父」と称される。600以上の社会福祉事業や教育に携わったことでも知られ、社会企業家の先駆者として近年、再評価されている。

 講演のテーマは「歴史から学ぶ企業経営」。渋沢と同時代に生きたタイプの異なる起業家の考え方や行動との対比で渋沢の経営的本質に迫った。

 多くの人から知恵と資金を集めて事業を実現させていく渋沢に対して、

独裁主義と利益重視を貫いて三菱を率いた岩崎弥太郎。時代の動きを見抜く慧眼の持ち主で乾物屋から鉄砲商として成功を収めた大倉喜八郎。両替店を営み通貨取引で才覚を発揮して財閥を築いた

安田善次郎の3人の成功者を例示。「政治や軍事力でなく、経済で社会全体の反映を目指したのが渋沢だ」と説明した。

 平松氏は、利潤の追求一辺倒ではなく、公益重視を当時から掲げるなど、現代の企業経営にも繋がる渋沢の先見性に着目。市場経済の中で取り残されてしまう弱者の救済やエリートの育成ではなく、現場を支える中間層を育てる教育的視点の高さを称えた。日米関係の悪化を両国の子どもたちによる人形交換で融和を図る民間外交など、柔軟な発想の持ち主であることも伝えた。

 開国史研究会の山本詔一会長との対談もあり、渋沢と横須賀との関わりにも言及。明治31年開業の東京石川島造船所浦賀分工場(川間ドック)に関与していることから平松氏は「横須賀を訪れている可能性は高いのではないか」と話した。

舞台の「裏側」案内 横須賀芸術劇場でツアー企画

 普段は見られない裏側、お見せします――。

 横須賀芸術劇場(横須賀市本町)の小劇場「ヨコスカ・ベイサイド・ポケット」の舞台裏を巡るバックステージツアーが12月21日(土)に開かれる。

 リサイタルやバンド公演、落語・漫才、講演会など多彩な催しが行われている同劇場。当日は職員の案内で各所を回りながら実際に使われている機材などを見学する。

 午前10時30分、午後1時、2時30分から1時間の内容。対象は小学生以上で各回12人。参加無料だが要事前申し込み。問い合わせは同劇場【電話】046・828・1602。

江戸城本丸御殿跡

OGURIをあるく 〜小栗上野介をめぐる旅〜第27回 江戸編【5】文・写真 藤野浩章

「ここはやはり姑息(こそく)な手段によらず、破約と攘夷(じょうい)の考えが如何(いか)に誤ったものであるかを朝廷に説くのが、正しい道であると存ずる」(第二章)



 生麦事件を原因として、薩摩とイギリスが交戦する事態となり、その結果、攘夷から倒幕へと転換していく――これが、幕府崩壊へ向かう時期の一般的な解釈だろう。

 しかし、事はそんなに単純ではない。ここからわずか1年足らずの間に、幕府はもちろん朝廷、薩摩、さらには長州藩も含めて実に激しい動きがあり、実はその過程では、幕府が復権できる最後のチャンスがあった。

 その渦中で闘い、もがいていたのが小栗上野介だった。教科書ではほとんど省略されてしまう事だが、その経緯を、本書の解釈に沿って少しの間たどっていきたい。

 生麦事件の後処理で、勝海舟(かつかいしゅう)は条約を結んだ7国のうち4国とは破棄し、その代わりに米英蘭の3国は継続して味方に引き入れ"防波堤"とするという案を出す。一方、小栗は「アロー号事件」を引き合いに出し、そのような考えは甘く、あくまで賠償金の全額を薩摩に支払わせ、日本唯一の政府である幕府が結んだ条約は破棄せずに開港、交易の道を進むべきだと主張した。冒頭の言葉は勝の案に対するセリフだ。これを勝は「お得意の正論」として一蹴する。

 外国の侵略で日本も清国のようになりかねない。しかし、もし強力な海軍力を持っていれば、と両者は思っただろうが、現実はほど遠い。

 「この際だから申し上げますが、あの計画、十年はおろか五百年はかかりましょうな」。計画とは、小栗が構想する海軍拡張案のことである。