多摩区・麻生区版【2月14日(金)号】

川崎市予算案 防災・防犯、子育てに重点 トイレ対策に2億円

 川崎市は2月6日、2025年度の当初予算案を発表した。一般会計は前年比2・5%増の8927億円で過去最大。近年リスクが高まる自然災害における防災・減災、暑熱、防犯などの安全対策、周産期支援や子育て施策のデジタル化推進などに重点を置き、「誰もが安心・安全に暮らせるまちづくり」を強調した。

 同日行われた記者会見で福田紀彦市長は「生命(いのち)を守る安全・安心予算」と命名し、「私たちの暮らしの基盤を改めて見直したい」と説明した。

 防災・減災、暑熱、防犯などの安全対策では、災害時のトイレ対策に2億2千万円を計上。携帯トイレ約95万枚を公的備蓄として新たに用意し、避難所や市立学校に2日分の備蓄を確保する。全避難所へのマンホールトイレ整備に向けた検討も進めていく。

 近年の気候変動により必要性が高まっていた市立学校の体育館などの空調設備の整備については、2億9千万円を投じる。25年4月1日時点では、市内の全体育館178棟のうち7棟の設置にとどまるが、25年度は15棟の整備に着手。27年度までに、23棟の設置を目指す。

 また、防災ラジオの導入や木造住宅の耐震化支援、AED(自動体外式除細動器)のコンビニエンスストアへの設置、防犯カメラ設置などにも予算を拡充。埼玉県八潮市の道路陥没事故により緊急性が高まる下水道の地震・浸水対策では179億円を投じる。

妊婦健診支援を拡充

 子育て関連では、周産期支援における切れ目ない支援として18億円を計上。7月から妊婦1人あたりの公費負担を現行の8万9千円から13万5千円へ拡大し、妊娠期の経済的負担を軽減する。

 「かわさき子育てアプリ」のリニューアルには3千万円を計上。妊娠届や出生連絡票などの申請・届出機能や、乳幼児健診の手続き機能を搭載して利便性を図る。

 まちづくり事業に関しては、福祉人材の確保・定着に向けた取り組みや市立看護大学大学院の開学などに注力。また、新たに患者の苦痛を軽減するアピアランスケア助成制度を創設し、医療用ウィッグなどの費用を助成する。がん患者以外も対象で、政令市では初。

 市制100周年を契機に生まれた事業を継続し、推進する取り組みには1億5千万円を計上。昨年の「みんなの川崎祭」や「Colors,Future!Summit」などを発展させ、市制100周年のレガシーを一過性のものにせず、市の文化につなげたい考えだ。

 地域公共交通の再構築に向けた取り組みでは、路線バスとさまざまなモビリティが連携する「モビリティ・ハブ」の形成に新規で5千万円を盛り込む。

 25年4月から改定される市立小中学などの学校給食費は、国の臨時交付金と一般財源を活用。保護者負担は現行の額に据え置きとなる。

市税、初の4千億超

 歳入で大きな割合を占める市税は、市民税や固定資産税の増加により4年連続の増加となり、初の4千億円を超えた。将来の借金返済のために積み立てている減債基金からの新規借入は92億円で、12年からの借入総額は766億円にのぼった。

 ふるさと納税による市税の流出額は149億円で、前年度見込みより13億円拡大。一方、受入額は38億円で、9億円の増加を想定する。福田市長は「さらに体制を強化し、受入額の拡大を目指したい。市民に対しても、ふるさと納税の影響について伝えていく」と話した。

㊤実際に提供されているメニュー=エルミロード提供、㊦プリンの試作をする子どもたち=今井代表提供

SDGs学ぶ小中学生 オリジナルメニュー考案 エルミロードで販売中

 川崎市内のSDGsの取り組みについて学ぶ小中学生の団体「カワサキSDGs推進隊」は、動物性食品を使わないオリジナルメニューを考案した。新百合ヶ丘エルミロード館内の飲食店で2月28日(金)まで販売されている。団体の運営を行う(一社)サステナブルマップの今井雄也代表は「経済の感覚なども学べる機会になった」と話した。

 SDGs推進隊は、「麻生区SDGs推進隊」として、2020年に発足。現在は多摩区、高津区へ範囲を広げ、地域が持続していく仕組みの理解などを目的に活動を行っている。

 今年度の活動内容を決めていく中で、栄養価が高く、食肉の代替品として注目される「大豆ミート」を使ったメニューの開発が子どもたちからあがっていた。地域の商業施設・新百合ヶ丘エルミロードに提案すると、同館も「SDGsへの理解を深めたい」と快諾し、連携に至った。

 今回協力したのは、同館5階にあるオーガニックレストラン「CRAFT&FARMERS」。同店のレシピを活用した「大豆ミートのタコライス」が店内で販売されることになった。

試作重ね形に

 加えて、子どもたちが考案したデザートもセットで提供することになり、候補にあがったのが「米粉のキャロットケーキ」と「オーツミルクプリン」。同店が制作したレシピをもとに、子どもたちは試作を行った。

 「既に炭水化物があるから米粉は重い」「プリンはカラメルと別添えがいい」など、多くの改善点があがったという。中学1年生の染谷咲希さんと渡部未来さんは「固くなったりカラメルが甘すぎたり、自分たちで作ったから分かることがあった」と振り返る。

 気付いたことを店側に伝え、調整した結果、最終的にプリンに決定。木製食器による提供や、子どもたちからのメッセージが書かれたおしぼりを添えるなど、こだわりを詰め込んだコラボメニューが完成した。

経済感覚も養う

 1月27日の販売開始から1週間ほど経った時点で様子を聞くと、「ファミリー層の注文が多く、売り上げは好調」とエルミロードの担当者は笑顔を見せ、「味だけでなく食器など、見せ方にも積極的に意見を出してくれた」と子どもたちとの取り組みを振り返った。

 今井代表は「今まで会社訪問、取材など、各企業と接点を持つ機会はあったが、今回のように自分たちが前に出て協働することは初めて。環境のことに加え、値段について考えることで経済感覚を学び、売る楽しさを感じてくれる機会になったと思う」と語った。

体の強さと正確な左足のキックが持ち味のディフェンダー 神橋 良汰さん 麻生区出身 22歳

応援される選手になりたい

 ○…即戦力の呼び声高い期待の新人が川崎フロンターレに加入した。持ち味は193cmという長身と体の強さを活かした空中戦、そして正確無比な左足のキックだ。攻撃の起点となる鋭い縦パスも、味方の足元にピタリと届けるスルーパスもお手のもの。「選手の特徴に合わせてキックの球種を選んでいる」と繊細な技術を語る。

 ○…フロンターレの育成組織に所属していたものの、トップチームへの昇格はかなわず大学へ。悔しさはあったが、「4年後にフロンターレに戻る」ことを目標に努力を重ねた。「フロンターレの事業部の皆さんも見守っていてくれたし、両親や友人のためにも必ず叶えたかった」と当時を振り返る。けがでプレーできなかった時期にはマネージャーとしてチームに貢献。ピッチの外から見ることで、チームとして戦う大切さを学んだ。

 ○…麻生区出身。街にはフロンターレのポスターやエンブレムがあふれ、常に身近な存在だった。小学生の頃にはフロンターレの試合は一年間の半分以上も観戦したという。今年1月に商店街回りをした際には「温かい応援の声を聞いて、あらためて良いまちだと思ったし、クラブが川崎を象徴する存在になっている」と実感。「周りの人がいてこそ、今の自分がいる。応援してもらえる選手になって、ピッチでの活躍で恩返しをしたい」と決意を語る。

 ○…休みの日には一人の時間を作るために、都内のカフェや喫茶店に行ってコーヒーを楽しむ。試合前には一転して、KANDYTOWNやBAD HOPといったヒップホップ音楽を聴いて気持ちを高める。あの時、サックスブルーとブラックのユニホームに憧れた少年が、今同じユニホームを身にまとい、ピッチに立つ。

カリタス幼稚園園舎の全景=カリタス学園提供

カリタス幼稚園 学校施設表彰で最優秀賞 主体的教育に相応な設計

 多摩区中野島にあるカリタス幼稚園がこのほど、一般社団法人文教施設協会が主催する2024年度の「優良学校施設表彰」で、最優秀賞の文教施設協会会長賞を受賞した。

 優れた学校施設を表彰し、今後の施設整備の質的向上に役立てることを目的に同協会が23年度から実施。建築や教育の専門家からなる選考委員が施設の計画・設計、環境および地域の特長や課題、実現プロセスなどを議論し選ぶ。今年度は最優秀3作品を含め、13施設が受賞した。

 22年に建て替えられた同園の園舎。講評によると、幼稚園棟と預かり保育・未就園児保育室などの棟が園庭を囲んで回廊により結ばれ内外が連続する空間配置となっている点、子どもたちが場所を自由に選びながら主体的に活動を展開するモンテッソーリ教育に相応しい空間設計となっている点などが評価された。

 同園の木田まゆみ園長は受賞について「空が広く見え、園庭を囲むように緩やかなカーブをつくる園舎は、神さまが子どもたちをその懐に抱くことをイメージさせるCARITAS(愛)と、子どもたちが自由に考え選ぶことを尊重する教育が表れている」と述べた。設計を担当した(株)SOU建築設計室の清水義文代表は「子どもたちの多様な居場所、モンテッソーリの教育環境、カトリック校らしい美しさなどの創出に工夫を凝らしたほか、安心で明るい地域環境を目指し学園全体の修景も行った」と話した。

 同園舎は、22年度の川崎市都市景観形成協力者表彰の対象となり、運営者の学校法人カリタス学園が受賞している。

畠山社長(左)、福田市長

川崎市 里山保全目指し協定締結 麻生区のアジア航測(株)と

 川崎市は2月5日、アジア航測(株)(麻生区万福寺/畠山仁代表取締役社長)と、真福寺谷特別緑地保全地区(麻生区)の里山保全活動に関する協定を締結した。

 里山の保全を目的に企業、教育機関と連携し、実践的な管理を行う「かわさき里山コラボ」の一環。2013年度に始まり、今までに7カ所9者と協定を結んできた。

 今回は、重点事業の一つとして森林・環境事業を掲げている同社が、協力を申し出たことから実現。市担当者は「測量、環境調査のプロの技術を保全活動で生かしてもらえる。市内の他の里山活動に生かすなど、さらに連携していければ」と期待を寄せる。

 市と同社は、締結に先立ち、緑地の環境調査を行い、どのように管理を行うのかを計画。下草刈りなど保全に必要な作業を同社の社員が行ってきた。昨年11月に、里山コラボ事業としては初となる、地域と連携した活動を実施。社員と共に、近隣住民が里山の整備を行った。

 5日には市役所本庁舎で協定締結式が行われた。畠山社長は「業務で培った技術を存分に生かし、社員や地域の方、隣接する真福寺小学校の児童も楽しんで活動できる里山を目指す」と意気込みを語った。

協定書を持つ小田嶋教育長(左)と生田学長

田園調布学園大と川崎市 教員養成で連携協定

 田園調布学園大学(麻生区東百合丘)と川崎市教育委員会は2月5日、包括連携に関する協定を締結した。相互の有する教育資源を活用し、地域に根ざした質の高い市立学校教員の養成を図る。

 連携・協力事項は「大学の教育課程及び教員養成課程等の充実」「高校生等を対象とした多様な学びの機会の提供」「市立学校の教育活動への参画・支援」などに関する7項目。福祉や保育、教育分野の人材を育成する同大は今年4月、従来の幼稚園教諭・保育士の養成に加え、小学校教諭一種免許状を取得できる子ども教育学部子ども教育学科を開設する。協定締結により同大の学生が市内の教育現場で実習や参観をしたり、市が職員や教員を大学へ講師として派遣したりするなどの取り組みが想定される。

 5日、市役所で行われた調印式には同大の生田久美子学長、米山光儀、安村清美両副学長、市の小田嶋満教育長、池之上健一教育次長らが出席し、協定内容を確認。小田嶋教育長は「川崎の教育を担う教員を川崎市にある大学と連携して育てていけるということは大きな意味があり価値がある」と期待を込め、生田学長は「川崎市と密な関係を持つことで良い教育を市民の皆さまに提供できる」と展望を述べた。

昔の鉄道と駅写真が並ぶ 28日まで せせらぎ館で

 多摩区宿河原の二ヶ領せせらぎ館で2月28日(金)まで、写真展「なつかしい鉄道と駅in多摩区」が開催されている。

 市内北部の郷土史を研究する稲田郷土史会が写真を出展。多摩区内を走る昔の小田急線と南武線の鉄道と駅の姿が並ぶ。同会は「懐かしい姿を集めた。きっとあの頃の記憶が蘇ってくる。楽しんでほしい」と来場を呼びかけている。

 午前10時から午後4時(17日(月)・19日(水)・25日(火)休館)。問い合わせは同会事務局【電話】044・935・3400。

劇を披露するボランティア

笑い通じて健康に 「さくらの丘」で観劇の会

 麻生区高石のデイサービスさくらの丘で2月6日、ボランティア有志が施設利用者に演劇などを披露した。

 相模原市のカルチャースクールに通っていたメンバーで、医療従事者を中心に立ち上がった「うたし喜劇団」が同施設を訪問。「さくらの丘」にちなみ、「花咲かじいさん」をモチーフにした創作劇を8人で演じた。

 劇では、不平不満ばかり口にする老夫婦と、笑いに溢れ感謝を大切にする老夫婦を対象的に演じることで、笑うことが健康につながることを伝えた。利用者が紙で桜の飾りを作ったり、歌ったりと、共に楽しむ姿が見られた。同施設管理者の笠原泰子さんは初めての試みを振り返り、「利用者の皆さんが心から笑っていた」と話した。

「川崎100周年ワイン」に舌鼓 MATSUさんも乾杯

 「かわさきワインサミット」が2月1日、麻生市民館で開催され、市制100周年を記念して学生らの手で造られたスパークリングワインの完成報告が行われた。

 このイベントは、NPO法人岡上アグリ・リゾート(麻生区岡上/山田貢代表理事)が中心となって進めてきた「麻生区の大学間連携による『川崎市市制100th記念』岡上プロジェクト」の一環。取り組みは麻生区市民提案型協働事業に採択されており、和光大学、明治大学、田園調布学園大学、昭和音楽大学が協力。川崎市産のブドウを使用して、市内唯一のワイナリーがある岡上で、ワイン造りを行ってきた。

 「サミット」当日はプロジェクトの関係者や地域住民100人ほどが参加。各大学の学生による取り組みの説明、成果の発表、今後の展望などに耳を傾けた。

 その後はいよいよ記念ワインの試飲。特別ゲストとして、川崎市市民文化大使で、記念ワインのブドウの収穫にも携わったEXILEの松本利夫(MATSU)さんが登場し、乾杯の音頭をとった。松本さんは「淡い感じがしておいしい」と笑みを浮かべた。山田代表は「ワインを機に川崎で農業ができること、自然があることを、麻生から発信したい」と語った。

東柿生小で福祉まつり

 東柿生小学校(麻生区)の体育館で2月21日(金)、「福祉まつり」が開催される。午前9時から11時50分。

 同校5年生の総合学習「目指せ福祉マスタープロジェクト」の成果発表として、各種福祉体験を予定。希望者は直接会場へ。(問)同校【電話】044・988・0017

未経験者の保護者へ説明

多摩高野球部 野球の魅力、知って 児童対象に交流イベント

 県立多摩高校(多摩区宿河原)の野球部による「野球交流イベント」が1月26日、同校グラウンドで開催された。地域の小学生1、2年生を対象に、同部の部員らが技術を指導したり試合形式で対戦したりして、野球の魅力にふれあった。

 学校の通年科目「総合的な探求の時間」で、野球の科学的な研究に取り組んでいる同部。このイベントは、地域の野球人口拡大を図るため、昨年度から実施されている。

 学童野球チームに声をかけ、当日は午前の部に多摩区、午後の部に高津区の小学生計約120人が参加。部員から「守る」「投げる」「打つ」の指導を受けたり、野球を簡易化した「BTボール」で対戦したりした。

 加えて今回は、チームに所属している児童だけでなく野球をしたことがないという子どもにも機会を提供しようと、午前の部で未経験者を募集。8人が参加し、その保護者に対しては、子どもが野球を始めるにあたっての不安を取り除くため、説明会も実施した。説明する際は、昨年度、学童野球チームに所属する児童の保護者らに対して行ったアンケート調査の結果を活用した。

 今回の企画を担当したのは2年生の稲毛暸介さんと鈴木諒介さん。児童に成功体験を持ってもらうためプレーの難易度を調整し、自信をつけさせるような声がけを意識したという。稲毛さんは「満足げな表情で帰ってくれる子や保護者がたくさん見受けられた。少しでも多くの子が野球を始めてくれたらうれしい。また、小学生に限らず、多くの人に野球人口減少に関する問題を身近に感じてもらうことが一番」と感想を述べ、鈴木さんは「子ども同士の試合後、異なるチームに所属する児童が仲良く話していてうれしかった。説明会に参加した保護者も積極的に質問してくれ、事後アンケートでも前向きな意見が多く寄せられた。初めての試みだったが、取り組みを実施して良かった。活動を通じて多くの人に野球の楽しさを知ってもらうことが何よりも大切」と話した。

 同部顧問の飯島佑教諭(37)は「昨年度までの研究成果が今回、直接反映できていることに大きな価値がある。未経験の児童と、保護者へのアプローチの根拠を生徒自身の研究から導き出せたことが昨年と比較して大きな進歩。次年度以降もイベントは継続して実施していく」と話していた。

<PR>
【LINE読者限定プレゼント】
【LINE読者限定プレゼント】
毎月15名様に抽選で『Amazonギフト券1,000円分』をプレゼント!ギフト券以外のプレゼントもあるかも!是非チェックしてみてください。 (続きを読む)

川崎商議所3月10日 商店街活性化フォーラム 専門家がヒント指南

 個店や商店街の活性に役立つヒントや集客につながるアイデアを10の事例から学ぶ「商店街活性化フォーラム」が3月10日(月)午後2時から、川崎商工会議所2階第3・4会議室で開催される。川崎市商店街連合会と川崎商工会議所が主催する。

 講演では「新時代の新集客法」をテーマに、店舗活性化コンサルタントの村越和子氏=写真=が登壇。また、川崎駅広域商店街連合会による、インバウンド集客に向けた取り組みの報告や、商業者向けの支援メニュー紹介なども行われる。

 主催者は「自分たちでも取り入れることができるものを発掘、活用できる機会」と参加を呼び掛ける。定員は先着100人。市商連会員優先。2月28日(金)締め切り。詳細情報や参加申し込みは、川崎市商店街連合会(【メール】k-shouren@tiara.ocn.ne.jp 【FAX】044・548・4106)。

「ピーク時ほどではないが、地域社会の偏見も課題」と語る岡野敏明会長

国内の感染拡大から5年 新型コロナ 医師会長「初心忘れず」 年末年始の患者数400人 

 2020年1月に新型コロナウイルスの感染者が国内で確認されてから5年が過ぎた。2023年からは感染症法上の位置づけが「5類」に変更されたが、実は再び市内の新型コロナ感染者数は増えている。川崎市医師会の岡野敏明会長に、「アフターコロナ」の現状を聞いた。

 新型コロナ感染症は、23年5月以降、感染症法上の位置づけが季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に変更され、行政による行動規制などは行われなくなった。しかし厚生労働省の人口動態統計によると、この5年間で新型コロナウイルスが原因で亡くなった人は、24年8月までに13万人以上。「5類」変更後に限っても、約4万4千人が亡くなっている。

 川崎市内でも、年末年始の休日診療体制の6日間で、診療所を受診した約7千人のうち約4千人がインフルエンザを発症し、約400人が新型コロナに感染していた。指定医療機関の患者数を定点調査している市の「感染症発生動向調査」では、今年1月27日から2月2日に304人が新型コロナに感染し、指定医療機関1施設あたりコロナ感染者が4・98人と、インフルエンザの4・84人より多かった。

 川崎市医師会の岡野会長は、「コロナが消えたわけではないことを認識してほしい」と呼びかける。「今まさに感染者は増えている。初心に戻って、マスクや手洗いを徹底してほしい」

 岡野会長によれば、「5類」以後は、医療機関としても、新型コロナの検査を積極的にしないケースが増えているという。さらに会長が「コロナ禍から継続する課題」と指摘するのが、新型コロナに感染している可能性がある発熱患者の対応に、消極的な医療機関があることだ。

 改正感染症法では、コロナ禍では受け入れ可能な病院が限られたために治療を受けられない患者が続出した反省から、都道府県が「感染症予防計画」を策定し、あらかじめ医療機関と協定を結ぶよう制度化した。

 岡野会長はコロナ禍の序盤、集団感染が起きた大型クルーズ船での対応も経験し、コロナ対応の難しさを熟知する。そのうえで「依然として高齢者への感染が怖い。ワクチン接種を呼びかけるなど、経験を生かし、感染のまん延防止にあたっていく」と話している。

ネットの差別的言動34件 川崎市 運営会社に削除要請

 「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」に基づき、川崎市は複数の投稿サイト運営者などに対し、外国にルーツをもつ人たちに対するネット上の差別的言動の削除を要請し、2月4日に公表した。

 同条例の第17条では、ネット上の表現活動が外国ルーツの市民に対する不当な差別的言動と認められるとき、拡散を防止するために必要な措置を講ずる、としている。

 市は条例に基づき、継続的にネット上の差別的言動を調査しているが、このほど掲示板「5ちゃんねる」や投稿サイト「X」、ブログサイト「アメーバブログ」、同じくブログサイトの「ライブドアブログ」に、不当な差別的言動に該当するものが34件、見つかったという。

 いずれも特定の市民に対し、国外の出身であることを理由に非難や中傷する内容で、「5ちゃんねる」では「祖国に帰れ」「なぜ日本に居座るのか」、「X」では「『ともに』ではなく帰れ」、「ライブドアブログ」では「日本もあなたたちの居場所ではない」などの投稿が掲載されていた。このため市は2月3日、「5ちゃんねる」を運営するロキテクノロジー社や、「アメーバブログ」を運営する(株)サイバーエージェントなど、サイトの運営会社に、削除を要請した。

 市の担当者によると、同様の差別的言動は2023年夏ごろから急増しており、市としても啓発動画を公開するなど対策を強めている。担当者は「市が毅然とした対応を続けることで、市民への啓発になる。今後も周知に力を入れていく」と話している。