浦賀地区にある住友重機械工業が所有する造船所、通称「浦賀ドック」の建物群のうち、半数の8棟が今月から取り壊される。閉鎖から10年以上経ち、老朽化や安全面を考慮しての判断。歴史的価値の高いレンガ積みドライドックは対象に入っていない。2年かけて更地にする予定で、今後の利活用については未定(同社広報)だという。
浦賀ドックは1899(明治32)年に創設され、2003年の工場閉鎖までの1世紀以上にわたり、約千隻の艦船・帆船の建造や修理を手掛けた。日本で最初の洋式軍艦・鳳凰丸もここで造られた。
解体の対象は、16の工場や造船関連の建物のうち、「東岸給電所」(1945年着工)など8棟。同所を象徴する施設であるレンガ積みのドライドックは今回取り壊しの対象外。同社広報は「築50年以上の建物もあり、台風や自然災害の際周辺住宅に被害が出ないよう考慮した」と話す。地元住民には先月から、町内会などに対して書面での説明を進めているという。2年かけて更地にした後の利活用については「現状では未定」としている。
「住民からアプローチを」
今回の件に関し、郷土史家で、浦賀で生まれ育った山本詔一さん(66)は、「安全面の問題なら仕方がないが、やはり残念。ドックを含めた施設全体を近代遺産としてうまく活用してほしかった」と話している。浦賀ドックの利活用については、以前から市と住重との間で話し合いが進められている。地元住民の間でも「浦賀が活性化するような使い方を検討してほしい」といった意見が聞かれるが、民間企業の所有であるため、なかなか交渉が進んでいないのが現状だ。
市は、工場が閉鎖した年に「浦賀港周辺地区再整備・事業化プラン」を策定。その中で、ドライドックや機関工場などを「(仮称)ミュージアム・パーク」として地元で活用する構想もあるが、計画は停滞している。一方、浦賀港周辺の回遊性を高める目的の「水辺プロムナード(散歩道)」計画は、現在、西岸壁側のコンビニエンスストア向かいの歩道を工事中で、今年度末の完成予定。市議で鴨居在住の永井真人氏は、先の遊歩道や7年後に予定されている川間地区のマンション建設などに触れ、「浦賀に良い変化を感じる。この流れに乗り、住重に対し地元住民から利活用案を提案していくべき。反映される保証はないが、行政に頼りきりだと受け身にならざるを得ない」と積極的なアプローチを呼び掛けている。
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