「親子でほっとできる場に」
○…鎌倉山にある古民家の一室に、子どもたちのにぎやかな声が響き渡る。母親たちはお茶を飲んだり雑談を交わしたりしながら、穏やかにその様子を見守っている―。このほどスタートした0から2歳児と保護者を対象とした子育て支援スペース「ほののんタイム」では、こんな光景が広がる。「親子で来るだけでほっとできる、そんな場になれば」とほほ笑む。
○…鎌倉生まれ、鎌倉育ち。大学院で教育社会学を学んだ後、市内の女子大で約10年にわたって教鞭をとった。学生たちとの日々は楽しかったが「以前から夫とともに『鎌倉の文化人や伝統文化の担い手と、子どもたちが出会える場所を作れないか』と考えていた」という。そんな時、小学校時代に同級生だった三味線奏者と出会う。「彼に私たちの思いを話したところ『ぜひやるべき』と背中を押された」。イメージにぴったりな古民家が見つかったこともあり、構想の具体化に奔走。昨年9月、伝統文化を学べる学童保育施設「鎌倉学び舎」をオープンさせた。
○…「7年前に長男が生まれた時、目の前の命を守らなくてはいけないと考えると、不安で毎日泣いていた」と振り返る。「ほののんタイム」はこうした経験から生まれた取り組み。「現場では専門家が話を聞き、具体的なアドバイスもしますが、それとともに保護者同士のつながりを作ることで不安や悩みを共有し、少しでも肩の力を抜いて子育てしてもらえたら」と話す。
○…「鎌倉学び舎」の開設からちょうど1年。「一人として同じ子どもはいない。どう伝え導いていったらいいのか、正解がない分、難しいですね」という。それでも「知識に血が通い、考えていたことがより深まった」と確かな手ごたえも感じている。「保育や教育に携わる人のための学びの場づくりも計画しています。自分が得たものを、これからも鎌倉の子どもたちの成長に役立てていきたい」と笑顔を見せた。