ホーム > 栄区版 > 人物風土記 > 松信 裕(ひろし)さん
掲載号:2010年1月21日号
○…「101年目は第二の創業、リスタートのつもりでいきます」。大手書店「有隣堂」の6代目社長として、昨年12月の創業100周年を迎えた。「この日を迎えられたのは、長い間ご愛顧をいただいたお客様のおかげ」と感謝を口にする。一方で100年に1度と言われる世界同時不況、出版不況にデジタル化という荒波のなかでの節目に、自然と険しい表情が浮かぶ。
○…「本が売れない」と言われる時代だからこそ、書店本来が持つ面白さにこだわる。「ネットなどと違い、書店には思いがけない本や雑誌との出会いがある」。それを演出するのは、高い専門性を持つプロの書店員。「チェーン店にありがちな画一的な売り場ではなく、店員自ら考え、地域に合わせた店舗づくりを進めます」。その言葉には、書籍という商品が持つ魅力、それを売る社員たちへの信頼感が感じられる。
○…現在も本籍地は同社本店のある中区伊勢佐木町。横浜で生まれ育った生粋のハマっ子だ。慶応大学を卒業後、朝日新聞社へ入社。営業マンとして各地を駆け回った。平成6年、当時社長だった父、泰輔さんが倒れたのを機に同社に入社。5年後に社長就任となった。「いまだに分からないことばかり。社員に助けられてなんとかやってきました」と冗談めかして話すが、組織の再構築、財務体質の改善で成長を主導してきた。
○…豪放磊落(ごうほうらいらく)という言葉がぴったり。飛び出す言葉はてらいがなく、年齢以上の若さ、チャーミングさを醸し出す。趣味は多いが「今は忙しくてオンもオフもないよ」と苦笑い。それでも焼酎愛好家団体の会長を務め、毎年大さん橋ホールで開催するイベントには1,500人以上を動員するなど、バイタリティは尽きない。さまざまな出来事にアンテナを張り、それをとことん楽しむところは「ハマっ子」の面目躍如といったところか。取り巻く環境は厳しいが、そのしなやかな思考で乗り切っていくに違いない。
2016年6月16日号
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