「危機的状況」は回避 共済病院の再開で分娩数増加 産科医確保に奔走続く
神奈川県は先月、産科医療と分娩に関する調査結果を発表した。これは、県内の病院・診療所(個人病院)・助産所に標記調査したもので、現状把握のために毎年行っているもの。数年前から「お産難民」という言葉で取り沙汰されている産科を巡る状況は改善されているのか。
この調査は、県内の産科施設を対象に、現在の分娩取り扱い状況や病床数・人員体制などの項目に関して回答を求めたもの(回収率98・7%)。調査によると、昨年度の県全体の分娩件数は69485件。今年度は70413件と928件の増加を見込んでいる。
また、分娩取扱施設に関しては、全体数は横ばい。医療従事者数では常勤医師・非常勤医師・常勤助産師・非常勤助産師ともに増加している。結果を取りまとめた県保健福祉局では、「非常勤医師・非常勤助産師・看護師については必要数よりも人員が多いが、常勤医師・常勤助産師についてはそれ以上の数が必要」と分析する。
横須賀の現状は
そのうち、横須賀・三浦地区(横須賀市・逗子市・三浦市・葉山町・鎌倉市)で昨年度、取り扱われた分娩件数は4863件だった(うち横須賀市は2630件)。今年度は5382件を取り扱うと見込み、うち横須賀市は3082件。昨年度に比べ452件の増加を予測している。横浜西部や川崎北・南部などで分娩件数が減少する中、横須賀・三浦地区の増加数は県の半数以上を占める。
この点に関して「昨年10月に分娩を取りやめていた病院(横須賀共済病院)が今年4月から再開し、受け入れ可能な件数が増えたためではないか」と市健康部地域医療推進課の担当者は話す。同院は分娩取扱件数が市内で最も多く、さらに市民病院の分娩休止(昨年11月〜)もあり、昨年来「危機的状況」と言われていた。共済病院の分娩再開に加え、診療所(個人病院)での取扱件数の増加などもあり、昨年度と比べると”受け皿”の状況は、僅かながら改善しつつあるといえる。
しかし、医療従事者数でみると非常勤医師・常勤助産師は減少、非常勤助産師のみ若干の増加となるなど、現場の必要数には満たない状況だ。分娩取扱を休止している市民病院に関しては、産科医の獲得に奔走していると言うが、再開の目途は立っていない。
こうした現状を踏まえ、横須賀市では産科医療対策支援事業を進めている。今年度は産科医師確保に要する経費への助成として、人件費の一部を補助する事業を新設するなど2170万を予算計上。また、市と市助産師会では、助産師の復職をバックアップする講習会を開くなど、人員確保の策を練っている。危機的状況は避けられたとはいえ、綱渡りの様相は否めない。人口減や定住促進などと大きく絡む長期的な課題として一層の取り組みが期待される。
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