観音崎自然博物館 希少タナゴの繁殖に成功 国内で初、一般公開へ
国の天然記念物に指定されているミヤコタナゴ。県立観音崎自然博物館では、国内で初となる白色のミヤコタナゴ70尾の繁殖に成功した。同館では生息地保全と個体数増加の最後の砦として1991年から人工増殖研究を行っている。今月22日(金)から一般公開される。
ミヤコタナゴはかつて関東地方の一部の小川や用水路に分布していた体長約5〜6センチの淡水魚。県内では主に鶴見川水系に生息していたが、時代と共に状況は一変した。
二枚貝であるマツカサガイを産卵母貝に繁殖するが、戦後の高度成長期を契機に都市開発や農業の仕組みの変化が水辺環境を変え、貝の生息地を奪った。貝がなければ数を増やせないミヤコタナゴも呼応するように減少。環境省レッドリストにも「ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高い種」とされている。
同館では数万尾のミヤコタナゴを飼育しているが、今回、ふ化した白色の個体は約70尾。白はメラニン色素の先天的欠損によるもので劣性遺伝子を引き継いだものにだけ現れる。
きっかけは1994年。千葉県で偶然見つかった1尾の白いミヤコタナゴを人工増殖させ、09年に白色のオス1尾のふ化に成功した。その後、交配を繰り返し、昨春に70尾が誕生した。これらは今年4月から5月に繁殖期を迎え、更なる白色ミヤコタナゴの増殖が期待されている。同館の石鍋壽寛館長(=中面・人物風土記)によると、繁殖期のオスの体は紫やオレンジの婚姻色に染まり、色鮮やかな様子を楽しむことができるという。「その時期だけしか見られないミヤコタナゴの美しさをぜひ堪能してほしい」と話している。
震災で全滅の危機を経験
長年にわたる研究過程ではトラブルも経験した。一昨年の東日本大震災では停電で電力の供給が滞り、飼育の生命線となる水槽のエアポンプが停止。死滅も危ぶまれたが、ガソリンや電池を使った代替ポンプで酸素を送って難を逃れた。
これらの経験も踏まえ、現在では大量ふ化技術はほぼ確立した。現在は館長と3人のスタッフがミヤコタナゴ研究に従事。今なお貴重な生息地が残る千葉県からの委託を受け、保全ボランティアの育成や技術提供を行っている。今後は産卵母貝の生態復元をめざす研究で絶滅の直接原因の除去に努めていくという。
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紙面から振り返るヨコスカ・ミウラ202412月20日 |
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