ミツバチはどこへ 大量失踪に養蜂家ら困惑
近年、横須賀市や葉山町で飼育されている大量のミツバチが突如”失踪”する現象が相次いでいる。地域内の養蜂場のハチが被害に遭い、その数は昨年と今年で170にのぼる。ダニやウイルス感染、ストレス、農薬などが原因ではと指摘する声もあるが原因は不明。具体的な解決策がなく、養蜂業は打撃を受けている。
温暖な気候の三浦半島は採蜜、趣味、花粉交配用として飼育する人が多く、神奈川県に養蜂飼育届が出されている横須賀市内の巣箱は約200存在する。
県養蜂組合三浦支部(石井勉支部長)によると、横須賀・葉山地域で被害が確認されたのは約7年前から。数万匹のハチが突如として著しく減少していたという。同様の現象が毎年のように発生するようになり、この2年で組合員が飼育する巣箱約170箱が被害を受けた。
市内で2代にわたって養蜂業を営む関養蜂園の関直由喜さん(秋谷在住)は、「春にいたはずのハチが秋にはほとんどいなくなったこともあった。養蜂家には死活問題」と苦境を吐露する。これまで大楠山の麓にある子安の里に巣箱を置いていたが、被害を契機に今年からは複数の組合員と共にハチをかくまう「緊急避難場所」を葉山町に作った。同様の事態は免れているものの、養蜂は巣箱の周囲にミツバチの繁殖・採蜜に欠かせない蜜源植物が豊富になければならない。従来と異なる環境下で一定の生産量を確保できるかは依然として不透明。
原因は調査中
2000年代初頭には、働きバチが幼虫や女王バチを残したまま巣に戻らなくなる「蜂群崩壊症候群(CCD)」と呼ばれる現象が世界各国で発生しているほか、ダニやウイルス感染、農薬、環境ストレスなど様々な要因が指摘され、農水省でも被害の実態把握や原因調査に乗り出しているが情報が不十分で全容解明には時間を要している。
様々な原因が挙げられるなか、近年広まった農薬(殺虫剤)との関連性を疑う声も浮上。ネオニコチノイド系の農薬は少量で殺虫効果が長時間持続する優れた特長を持ち、今では農家の田畑のみならず一般にも普及。家庭園芸・山林・街路樹・ゴルフ場での散布、ペット用ノミ取り剤、住宅建材に使われるなど用途が幅広く、身の回りに存在する。その一方で、ミツバチなどの益虫にも影響を及ぼす可能性があり、CCDとの因果関係を示す研究結果も発表されていることから浸透移行性の農薬に注目が集まっている。しかし、現時点で科学的根拠はない。
ミツバチをパートナーとしているのは養蜂家だけではない。イチゴやスイカ、メロン農家にとって花粉交配用のミツバチは必要不可欠。津久井の観光農園「いちごはうす西脇」では、定期的にミツバチを購入しているが、近年では供給不足で入荷待ちになったこともあると言い、販売・レンタル価格は年々右肩上がり。生産コストの上昇は農家にとっても頭の痛い問題となっている。
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