横須賀市内で飲食事業を展開する「株式会社住よし」は、知的障がい・精神障がいを持つ人の就労支援を目的とした障害福祉サービス事業所を自社工場内に開設した。市内の株式会社が同事業に参入するのは今回が初めて。一般就労に近い訓練の場を提供することができるなど民間企業ならではの強みを活かした、独自プログラムで支援を行っている。
株式会社住よしは昭和46年に創業、市内で割烹料理店や仕出し料理などの飲食事業を広く展開。経営する食堂などで使われる食材を加工する工場を森崎に構えている。今年8月、同工場内に横須賀初となる、株式会社による知的障がい者と精神障がい者の就労支援事業所「フードプランニング」を開設した。
障害者自立支援法(現在の障害者総合支援法)が施行される平成18年以前は、障害福祉サービス事業所運営は社会福祉法人のみ認可されていたが、同法により規制を緩和。障害福祉サービス事業へ特定非営利活動法人(NPO)や株式会社などの参入が可能となった。横須賀市と同規模の藤沢市や鎌倉市でも、平成24年頃から株式会社が就労支援事業所を開設している。
経験を自信に
フードプランニングは、一般企業へ就労を希望する人の訓練を行う「就労移行支援」と、一般企業等への就労が難しい人に労働機会を与える「就労継続支援B型」のサービスを提供する。
今月から本格的にスタートし、現在は主に精神障がいを抱える3人が通所。平日の午前9時から午後4時頃まで作業訓練を受けている。ここでは社員・パート従業員の指導を受けながら、厨房スタッフとして簡単な食材の仕込みやパック詰めなど、調理補助業務を任されている。そのほかにも、就労に必要な知識や能力、生活リズムの習得、就職活動・職場定着支援を行っている。管理者の柏崎嘉則さんは、「訓練の場が企業内にあることで、より一般就労に近い実践的なトレーニングを提供できる。周囲の社員から頼られ、期待されれば利用者も意欲的になる。これが自信に繋がり、社会的自立を促進できるのでは」と民間企業ならではの特色を説明する。また、地元密着企業として、他の地域事業者と協力しながら、利用者が求める作業環境が作れるという。
将来的には、一般企業への就職だけでなく、個々の適正を考慮した上で、同社が経営するレストランの店舗スタッフなどでの雇用も検討している。
詳しくは同社【電話】046・887・0034
障がい者雇用支える具体策
障がい者は身体障がい、知的障がい、精神障がいの3つに分類される。横須賀市内の障害者手帳所持者は順に約1400人、約2600人、約2500人おり(平成23年4月1日時点)、その数は年々増加傾向にある。憲法改正や健常者も障がい者も隔てなく社会生活を送る「ノーマライゼーション」の精神が浸透するなど、全国的に障がい者の就労支援環境は徐々に改善している。
市でも障害福祉施策に関して、障害者基本法と障害者自立支援法に基づいた2つの計画を総合的に実施。しかし、同規模の藤沢市などと比べると市内の障がい者を取り巻く就労水準は依然として低い。例えば、市内の障害福祉サービス事業所は就労移行支援3カ所、就労継続支援A型1カ所、就労継続支援B型13カ所。一方、藤沢市ではそれぞれ8カ所、4カ所、17カ所と上回り、より多くの利用者を受け入れている。地域格差の要因は複合的だが、三方を海で囲まれた半島特有の産業・振興の低滞も影響しているのではと言われている。
せっかく福祉施設で訓練を受け、障がい者の就労意欲が高まっても雇用する企業がなければ力を発揮することができない。そこで市では横須賀商工会議所や公共職業安定所(ハローワーク)などと、障がい者雇用の推進を図るため相互連携を強化。未だ設置が進まない特例子会社の誘致・設立費用の一部助成や、雇用奨励金支給など独自策で後押しする。今年度末までに、就労移行支援・就労継続支援を受けた障がい者12人が一般就労できるよう具体的な数値目標を掲げ、取り組みを進めている。
職に就くことはゴールではなく、あくまでスタート。社会的自立と安定した生活が送れるようにならなくてはならない。市は今年度の新規事業として約620万の予算を充て、支援機関の「よこすか就労援助センター」に専任職員を新たに配置。障がい者の職場定着と離職率低下をめざす。
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