祖父、娘、そして孫―。3世代でヨットに親しみ、大会に挑んだ家族がいる。第88回ヨット競技市民体育大会が18日、長浜海岸で行われた。史上初となる3世代同時エントリー。三浦市在住の仁藤勝郎さん(70)と公郷町在住の本島海音子(みおこ)さん(38)が2人乗り用、孫の駿太郎(はやたろう)君(9)は1人乗りで海へ挑んだ。
元日本チャンピオン
仁藤さんは、地元愛好家達の間で「伝説のヨットマン」と呼ばれる腕前。中央大学時代、潮風に吹かれながら、海上で勝負するこの競技に熱中した。勉強は二の次で、合宿や遠征で海に繰り出す日々。単位が足りず留年したほどだったが、全国大会では圧倒的な強さで日本一に輝いた。しかしその後すぐに第一線を退いた。
卒業後は仕事に忙殺され、ヨットはたまの休みにたしなむ程度。結婚後、子どもに教えたい気持ちがあったが、海音子さんは「海より山が好き」と思いは叶わず。
孫の駿太郎君が生まれたのが9年前。言葉も話せない時期から海に連れ出し、沖を走るヨットなどを眺めながら、関心を高めようとした。そして小3になった今年、「やってみたい」と一言。すると関心の薄かった海音子さんも「ただ外から見ているだけで子どもに『がんばれ』なんて言えない」と海に出ることを決意。こうして家族3代で同時に横須賀ヨット協会のクラブに入会した。
孫の成長
意欲を見せた駿太郎君だったが、いざ練習場となる長浜海岸を目前にすると、足がすくんだ。海に出ると号泣。しかし「楽しさはもちろん大事だが、一つの壁を乗り越えてほしかった」とクラブ長を務める池田愛さん。駿太郎君の成長のため、あえて逃げ道は作らず挑戦させた。マストに上手く風を取り入れる方法や、自分の倍以上ある船体を扱うことに「最初は難しかった」が月2回の練習を積み重ね、今回初めての大会へ臨んだ。
砂浜から約1キロの沖合で1人ぼっち。腹痛を訴え、ヨットから降りようとしていた春先の面影はもうない。制限時間には惜しくも間に合わず、記録は残らなかったが、堂々の走りを見せた。約3キロのコースで2キロ地点まで到達。「初心者の小学生があそこまで行けたら上出来」と池田さん。同じく今回初出場の海音子さんは「私より上手くなるのが早い」と我が子の上達に目を見張る。レース後の片付けを率先して行う姿にも「遠慮がちだった子が、上級生や大人に囲まれ、自分から行動するようになった。最近は家で家事も手伝ってくれる」と顔をほころばせた。
そしてさらに幸せそうだったのが勝郎さん。「娘と孫と一緒にヨットができる日がくるとは思わなかった。もう人生でやり直したことはないよ」。豪快に笑う姿には、心の奥底から嬉しさがにじみ出ていた。
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